残滓と余波−8


「さて…君たちに来てもらったのは他でもない。私と唯斗についてだ」


アーサーは集まった騎士たちを前に単刀直入に切り出した。

円卓会議、というには長机が四角く配置された形状が不適格だが、集まっているのは紛れもなく円卓の騎士たちだ。
といっても、アーサーのほかにはガウェイン、ランスロット、トリスタン、そしてアルトリアだけであり、往時のそれとはまったく違う。

ガレスとモードレッドについては、残念ながらシミュレーターにでもいるのか捕まらなかった。

ちなみに、アーサーは当初、こんな会議を開く予定ではなかった。

ただ、今晩の不寝番は見送った方がいいと考え、ガウェインに頼みに行ったところ、ガウェインは食堂で唯斗に叱られてしまったという話をしていたため、ここはエミヤに頼んだ方がいいだろうと二人でエミヤに頼みに行った際、「円卓会議でも開いてはどうかね」と言われ、今に至る。

まず、ランスロットがアーサーに問いかけた。


「異世界の我が王。我々も、唯斗殿と口論になられたとだけしか聞いておりませんので、まずは経緯などをご教示いただきたいのですが」

「そうだね。今日のレイシフトで、活性アンプルを試したときのことなんだけれど…」


そうしてアーサーは、まず唯斗とのことを説明した。
活性アンプルの導入試験に際して、副作用がひどく唯斗に出てしまったこと、それにも関わらず周りも唯斗も使用に前向きであったこと。
使用に反対するアーサーとの間で徐々にヒートアップしていき、ついにはただの喧嘩になってしまったこと。

一通り話し終えてから、今度はもう少し、補足を加える。


「確かに過保護と言われてもおかしくはないと自覚している。デメテルのことも、徒歩で数時間かかるボーダーへの帰投ではなく藤丸君たちとの戦闘に加わった判断は、必ずしも間違いじゃかったと思っている。けれど…彼は、少し前から、眠りが浅くなった。悪夢を見ているのか、ひどくうなされて、ひどいときは起きてしまう。最初は週に1回程度だったものが、今では週に3、4回にまで増えているんだ」


そう、唯斗はここのところ、途中で眠りから覚めてしまう回数がどんどん増えていた。前からそういう夜はあったが、大西洋からの帰還後、この1ヶ月ほどは日増しにひどくなっている。
ほとんど毎日、十分な睡眠が取れていない。最低限は眠れているものの、薄氷な状況だ。


「あぁ…私も経験しています。夢見が悪く起きてしまったのだとマスターは仰っていますが…」

「藤丸君と違い、夢でレイシフトするほど彼のレイシフト適正は高くない。というか藤丸君が異常値なんだが…なんにせよ、たとえレイシフトさせられる危険がなかったとしても、今のペースでは慢性的な睡眠不足になるだろう。それだけ、異聞帯の旅は唯斗に悪影響を与えている…だから、なるべく彼を守るために、私は彼の傍にいなければならないし、極力一人にしてはならないし、だからこそ活性アンプルも不要だと考えた」


ようやくアーサーの言動の背景を理解したガウェインたちは難しそうに考える素振りを見せた。これが単なるアーサーの過保護であれば良かった。けれど、唯斗は事実として、精神的に追い詰められている。

しかし、アルトリアはガウェインたちを呆れたように見渡した。


「…卿らよ。それほど考えることですか?さほど難しいことではないでしょう」

「…この世界の私よ。あなたは今日の場にも同席していた、意見を聞いても?」


アルトリアはアーサーの隣に座っているが、こちらを見上げて、やはり少し呆れ顔をした。


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