始まりの惨劇−5
査問が終われば、また何もしないまま一日を独房で過ごすだけの時間が4日間続いた。ある意味査問の方がましだ。
そうして、ついに全スタッフの任期満了期日となる、2017年12月31日となった。
Aチームの蘇生は今日で完了するはずだ。このあと、いよいよどうなるか、結論が下される。その結果がどうであれようやくアーサーに会える、と思っていた、そのときだった。
『警告、警告。現時刻での観測結果に■■発生。現在、地球上において観測できる他天体はありません』
「……は?」
突然、警告が鳴り響いた。途中、ノイズが走って聞き取れなかったが、これまで聞いたことがない警告アナウンスだ。
さらにアナウンスは続く。
『全スタッフに通達。正門ゲート他、館内すべてのゲート機能が停止しました』
ゲートがすべて機能を喪失したというアナウンスに続いて、廊下から銃声と悲鳴が聞こえてきた。完全に戦闘が起きている。
「…、まさか、外部からの襲撃か…?」
まるで、グランドオーダーの始まりのときのようだった。
ここよりはマシな部屋だったが、生活感のない無機質な部屋であった点はここと同じ自室。
それが、爆発音とともにすべて一変したのだ。さすがに無気力なままではいられないと重い腰を上げて管制室に向かい、そしてそこで、立香に出会った。
あの始まりと同じ惨劇が、再び起きていた。
「スペード隊、聞こえるか!?今救援に向かう!!」
扉の外では、見張りの兵士が立ち去った音が聞こえた。部屋は丁寧に外からロックされてしまっているが、これを破ることは造作もない。
兵士の様子からして、まだ扉を破っても大丈夫そうだ。
唯斗は右手の指先を扉に向けて、左手で手首を押さえて魔力を籠める。そして、魔力多めのガンドを放った。
直後、扉は一気に吹き飛び、轟音とともに廊下に叩き付けられる。即座に音を聞いて人の気配がないことを確認すると、唯斗は廊下に出て、他の謹慎室に向かう。
外からロックを解除して、中のスタッフたちを外に出した。
「ありがとう唯斗君!」
「助かった!いったい何が?!」
「俺にも事情は分からない、けど、襲撃が起きてるのは確かだ。ゲート以外の出入り口は、地下の貨物運搬通路だけだ」
「そ、そうね!ここからなら東館の階段を通って行く方が近いわ!」
スタッフたち4名と、他の部屋から先に逃げてこちらにやってきた6名が、合流して、東館へと向かう。
「君も早く!」
「俺は立香たちの様子見てくるから、先に行っててくれ」
「気をつけるんだぞ!」
スタッフたちを見送ってから、唯斗は立香たちを探しに行こうとした。
しかし、前方の廊下から銃声が聞こえてきたことで、いったん足を止める。
「中央棟ルートはだめか…なら先に、アウラードを…」
まだ唯斗の部屋には、オジマンディアスから預かったアウラード1匹がいる。唯斗がカルデアを離れれば自然と消えるとオジマンディアスは言っていたが、だからといって放っておくこともできなかった。
唯斗はすぐに近くの階段から上階へと走る。階段を駆け上がり、視力に強化をかけて銃声や足音に神経を尖らせる。
やがて見慣れた廊下に入ると、すぐに自室に入った。
「アウラード!」
大きな声で呼べばすぐにアウラードが棚の中からぴょんと現れ、唯斗の腕の中に収まった。
唯斗は部屋を出ようとして、机の上に置いておいたものがきらりと光るのを目にとめる。
サンソンとディルムッドにもらった花でつくった栞と、ギルガメッシュにもらった指輪だ。さすがにこの状況で栞を持って行くことはできないが、指輪くらいなら持ち出せる。
唯斗はその指輪をポケットに押し込むと、すぐに部屋を飛び出した。