無間氷焔世紀ゲッテルデメルング−19
本来、紀元前1000年頃に発生したラグナロクは、巨人の子でありオーディンの義兄弟であるロキが発端となって始まり、スルトによる9つの世界の破壊とオーディンの殺害、その後の神々の争いの果てに、すべての生命が息絶えて終わるはずだった。
しかしスルトは、自分が終末装置として死んだ後も何かが残ることを良しとしなかった。世界の終わりを望んだのだ。
そうして、太陽を喰らった氷の狼フェンリルを喰らって、太陽があった空の穴にムスペルヘイムを繋げてその炎熱を世界中に蔓延させようとした。神々も抵抗し、最終的にオーディンたち神々とは相討ちという結果に終わった。
オーディンは原初のルーンでスルトを太陽に閉じ込めて偽の太陽とし、力尽きた後は神々の花嫁たるスカディにすべてを託す。
スカディは浸食を続けようとするスルトの血が燃えるスカンジナビアに氷結を展開して拮抗させ、人類を管理して生きながらえさせた。
なんとかそうやって人の時代への移行を試みていたスカディだったが、そこで汎人類史に淘汰され、剪定されてしまう。
一方、オフェリアは恐らく、人理焼却の際に魔眼でスルトと目が合ってしまい、縁が生まれたことで、異聞帯配属にあたって自身のサーヴァントを呼び出した際にスルトが入ったシグルドを招いてしまった。
咄嗟にオフェリアは自害を命じることでスルトの魂をシグルドに閉じ込め、復活を阻止してきた。
現在、オフェリアはスルトと共にいると思われる。もしかしたら、精神を掌握されてしまっているのかもしれない。
スカディが玉座の間にて話し終えたところで、ホームズは所感を述べる。
『恐らく、スルトの狙いは空想樹でしょう。あれを飲み込んで完全体となることで、再びの黄昏を再現しようとしている。そうなっては異聞帯も汎人類史も終わりです。どうでしょう女神スカサハ=スカディ。一時の共闘をさせてもらえないだろうか』
「…うむ、こればかりは、致し方在るまい」
敵の敵は味方ではないが、スルトはどちらの陣営にとっても早急に放逐するべき存在だ。スカディは迷いながらも頷いた。
ナポレオンは明るく砲塔を床にドスンと置く。
「っつーことは、我が新生大陸軍には女神までご列席ということだ!先頭は任せるぜ、お二人さん」
ナポレオンに示されたシグルドとブリュンヒルデは頷く。
「はい。霊核と霊基が今度こそ砕け散っても…私たちは刃となってお役に立ちましょう。心なき炎に、私は焼かれません」
「オーララ!惚れるねぇ!」
ナポレオンはそう軽くのたまったが、ブリュンヒルデは本気で困る。隣にシグルドがいるからだろう。しかしシグルドはまったく気にしていない。
「お前の美しさであれば仕方なきこと。だが皇帝よ、貴殿は彼女の愛を獲得することはできまい。すでに当方が得ている」
これにはブリュンヒルデも頬を染める。ナポレオンも「完敗だ」などと言っている通り、さすが北欧最大の英雄である。
「…やっぱ本物のシグルドって格好いいんだな……」
「マスター?それなら僕たちもイチャついた方がいいかい?」
すると、なぜか張り合うようにアーサーが唯斗を後ろから抱き締めてきた。あからさまに愛を伝え合う二人に刺激されたらしい。アーサーにもそんな単純なところがあるのか、と思うと、こんな状況なのに笑えてきた。
「…アーサーって結構かわいいとこあるよな」
「な…っ」
「あ、こっちは唯斗の方が勝ちだね」
ついそう言ってしまうと、アーサーは顔を少し赤く染める。それを見ていた立香は呆れたように勝敗を告げた。