ノウム・カルデア−2
召喚ルームに入ると、ダ・ヴィンチがにっこりと微笑んで出迎えた。
「お、来たね。じゃあ早速頼むよ、モニターはしてるけど、基本的には再会を君たちだけで楽しんでくれたまえ」
「マシュの盾はいらないのか」
「そうだよ。新規召喚ならまだしも、今回は霊基グラフからの再召喚だからね。この部屋の術式とグラフだけで十分さ。ではね」
そう言ってダ・ヴィンチは部屋を出て行った。まだノウム・カルデアの稼働のためにいろいろとやることが山積みなのだ。再召喚はマスターに委ねられている。
唯斗は一人になったところで、霊基グラフと術式を前に、順番に呼び出していくことにした。
「…抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ」
右手を掲げて詠唱を終えた直後、術式が輝き、中から大量の霧が噴き出す。魔力が溢れる中に、ひらりと赤い胴衣を翻して英霊が現れる。
「…サーヴァント・アーチャー、再度の求めに応じて参上した。随分と早い再会だな、マスター」
「……久しぶり、エミヤ」
現れたのはエミヤだ。カルデアの食堂で別れて以来となる。エミヤは抑止に派遣される守護者だ、概ね世界の状況は理解しているらしい。
口では皮肉めいたことを言いながらも、その表情は少し苦しげで、愁いを帯びていた。そして、唯斗の前に来るなり、唯斗の頭にその大きな手を置いた。
「…事態は大体理解している。大変だっただろう、よく生き延びた。再会できて嬉しく思う」
「……俺も、また会えたことは素直に嬉しいよ。また、力を貸してくれるか」
「もちろんだとも。さて、早速最初の仕事に取りかかろう。食堂は好きにしていいんだろう?」
「任せた。人数は…人間のスタッフは、半数に減ってるけど、食材はそこまで豊富というわけではないらしいから」
半数にまで減ったと聞いて、エミヤはさらに苦しそうな顔をしてから、すべての感情を飲み込むようにして小さく笑った。
「…そうか。そのあたりの管理も任せておけ。君はまだ再召喚するんだろう?無理はしないようにな」
エミヤはそう言って、もう一度ぽん、と唯斗の頭を撫でてから召喚ルームを出て行った。エミヤなら道案内をせずとも食堂まで辿り着くだろう。
これで、この半年を耐え凌いできたスタッフたちに温かく美味しい食事が提供されるようになる。もちろん、料理要員だけではないため、エミヤによって近距離・中距離ともにカバーしてもらえるようになる。
エミヤが出て行ってから、再度唯斗は召喚を行う。このまま、出会った順に召喚していくのだ。
「…サーヴァント、アサシン。シャルル=アンリ・サンソン…マスター、またお会いできましたね」
魔力の霧の中から現れたサンソンは、ふわりと笑って唯斗のところまで来ると、そのまま唯斗を抱き締めた。清潔な匂いに包まれて、黒いコートに覆われるようにサンソンの腕の中に閉じ込められる。
思わずそのまま肩に頭を乗せると、後頭部を撫でられた。
「……またも世界の危機が起きたのでしょう」
「あぁ。世界は白紙化されて、テクスチャごと人理は消失した。7つの異聞帯がそのテクスチャを上書きするために競い合っていて、俺たちはそのうちの2つを潰した」
「すでに2つを修復されたのですね」
「いや、修復じゃない」
唯斗はサンソンの肩から顔を上げる。言いづらいことだが、きちんとこの戦いの意味を説明しなければならない。
しかしサンソンは、唯斗が言う前に唯斗の唇に人差し指を押し当てた。
「…とても言いづらいことなのでしょう。口を開く前から、傷ついているように見えます」
「そ、うか…?」
「ええ。ならば、なるべく少ない数で済ませた方がいい…僕の他にも、何人か先に呼んだ方がいいでしょう」
「…うん、ありがとう」