人智統合真国シン−7


魔獣捜索は立香たちが赴き、唯斗とアーサーはボーダーに待機した。
その日はそれで終了し、夜が明け、異聞帯3日目を迎える。

昨日の調査ではコヤンスカヤに纏わる情報は特に発見できなかったものの、魔獣たちが高度に社会化されているという点で、コヤンスカヤによる改造が入っているだろうという結論になった。

今日はどうするか、ということを考えようとした、その矢先、再び咸陽からロケット弾がこちらに接近してきたというダ・ヴィンチの警告が入った。
さすがに2回もクリプターを退けたとあれば、恐らく次の援軍はそれなりの強度になっているはず。

一同は警戒を強めながら、着弾地点に近づいた。


「あれに乗ってんの敵なんだろ?なら先手必勝だろ!」


飛来するコンテナを視認したモードレッドは、先制攻撃とばかりに宝具を解放した。
毎度アーサーが微妙な顔をする宝具が解放されると同時に、禍々しい光線が麦畑の上を横切り、コンテナを破砕する。

しかし、中から現れた巨大な馬のような四足歩行の物体は、カルデアの正面に難なく着地する。


「戦力測定完了、脅威度:軽微」

「な、んだあれ……」


これまでのオートマタとは格が違う、下半身は馬で上半身は人の姿をした巨体。風にたなびく青い髪、威嚇するように広がる4本の腕と剣。
驚くべきことに、ダ・ヴィンチ曰く、これは機械なのだという。


「まずい…!あんな魔力出力、まともに喰らったら吹っ飛ばされちゃう!みんな耐えて勝機を窺って!!」


ダ・ヴィンチはかなり警戒しているが、言われなくても、歴戦の戦士たちは表情を険しくしていた。モードレッド、スパルタクス、アーサーは魔力を漲らせて構え、荊軻と哪吒も立香を守る位置にいながら巨体を睨み付ける。

直後、巨大な体をものともせず、敵は一瞬でモードレッドたちの目の前に現れた。その4本の手に持つ槍と剣が、一斉にサーヴァントたちを吹き飛ばす。


「ぐあッ!」

「くっそ…っ!!」

「なんたる心地よい圧制!!」


アーサーとモードレッドは呻きながら麦畑を抉りながら叩き付けられ、スパルタクスも畦道を粉砕するように飛ばされてから、血を流して立ち上がる。
たった一撃でここまでやるとは思わず唖然とする。こんなもの、まともに戦うわけにはいかない。

しかしそこに、蘭陵王が焦ったようにしてやってきた。


「項羽殿!なぜお一人で先陣を!?」


なんと、あの半馬の敵は項羽だという。項羽が機械だったのか、機械に項羽と名付けたのかは定かではないが、全員動揺する。

項羽は蘭陵王の問いかけに泰然と答える。


「まず何を差し置いても計測だ。私にはそれぐらいしか得手がない。だが今の戦いで程度は知れた。これで軍議ができる。では、陣幕へ行こう」


項羽はすでにこちらへの関心をなくしているようで、蘭陵王の案内で武当山の向こうへと歩いて行った。どうやら武当山の東側に陣を張っているらしい。

まるで嵐のような存在だ。唯斗は立香が消耗するのを避けるため、代わりにサーヴァントたちの回復を行ってから、その日の夕方には、オートマタと項羽の解析結果に基づく作戦会議が開かれた。

まずあの項羽もオートマタも、道教の仙術によって生み出された神の機械である哪吒と通ずるものがあった。哪吒は殷代に道教の仙術で生産された存在であり、恐らくこの異聞帯ではそれを復元することに成功しているのだろう、という見立てだった。
モデル機として項羽が生み出され、さらに廉価版としてオートマタが造られたというのが哪吒の見解だ。

つまり、あの項羽はサーヴァントなどではなく、神の技術で造られた存在に近しいとてつもない兵器であり、相当な実力をまだ発揮せずに残しているということだ。

しかも悪いことに、咸陽から陸路で輸送される増援も確認できている。これは人間の兵士であることを意味していた。

手勢の数まで押されてしまっては打つ手が無くなるため、一か八か、カルデアはヒナコたちを急襲することにした。


93/359
prev next
back
表紙へ戻る