夢が叶った先に−10


応利はこちらを睨みつける男たちのうち、配信でも常に映っていた主犯格らしき男に視線を向ける。


「お前たちの目的はなんだ。ただ金が欲しいわけじゃねぇだろ」

「そうだよ!これは復讐だ!社会への復讐だ!」


思想犯、というにはやることが小さい。復讐と格好つけて言っているが、政治思想のそれではなさそうだ。


「そのわりに、俺に対してかなり挑発的なやり方取ったよな」

「当たり前だろ!俺ァお前にも復讐してぇんだからな!」

「俺に…?」


心当たりがなく首をかしげる。かつて応利が捕らえたヴィランかとも思ったが、全員もれなく刑務所で服役中であり、釈放された者はいない。捕まらない程度のことでこのような事件を起こすとも思えない。
男は勝手に言葉をつづけた。


「俺は!俺たちは!こんなにも苦労して、虐げられ、地べたに這いつくばって生きるしかねぇってのに、お前は華々しい成功を収めて、そのガキも金で金を洗うような生活して、不平等だ!不条理だ!だから人質にとって、お前をここに誘き出して、お前が苦手な個性のヤツで叩きのめすつもりだったのに!なんだその炎!?エンデヴァーの息子でSKだろ!」

「…、それは……」


応利が何かしたとか、松野社長が何かをしたとか、そういうことではないらしい。ただ、直近で成功を収めたニュースがあった応利と松野社長に目を向けたというだけのようだ。成功している二人を同時に傷つけるために誘拐事件を引き起こしたが、ヤツの誤算は燈矢だった。どうやら、エンデヴァーの息子でSKという印象が強かったのと、応利関連の事件解決ニュースで燈矢のことはあまり出てこないことから、いまだに燈矢がエンデヴァーのもとにいると思っていたらしい。
そのため、応利を倒すための虎の子の個性を持った者たちは、恐らく最初の燈矢の炎によって倒されてしまった。人質のすぐそばにいた者たちだろう。

それを聞いて、燈矢が呆れたような声でばっさり切り捨てる。


「ただの八つ当たりじゃねェか」

「こら、言わなかったのに」

「あぁ!?エンデヴァーの息子のくせになんだテメェ!お前だって持ってる側だろうが!!」

「…持ってる、ねェ」


確かに個性だけなら「持ってる」と言えるし、外見や頭脳もそうだ。だが、体質は残酷にも合わず、頭脳に至っては本人の努力でしかない。決して、応利は燈矢がただ「持っている」側の人間だとは思わない。
だが、そんな理屈が通じる相手ではない。


「トーヤ、話すだけ無駄だ。人質の体力に懸念がある、片付けるぞ」

「ん、」

「はぁ!?俺たちの個性ならここからでもそのガキを、」


男の言葉が終わる前に、燈矢は一気に蒼炎を男たちに向けて放つ。かまいたちのように鋭利に飛び出した炎に、男の1人が大量の水流を噴き出す。蒸発して大量の水蒸気が立ち上る大きな音がするが、すでに炎は燈矢自ら消していた。

そのときにはもう、応利が投げた爆竹が空中にいくつか投げ放たれていた。

炎の名残と水蒸気が消える前に、爆竹が炸裂。同時に、応利の過圧がその爆発による衝撃波を一方向かつ極端に増幅させた。
それによって、まだ空中に噴き出したい水流もろとも、男たちは奥の壁へと吹き飛ばされる。


「うわぁっ!!」

「なんだこれ!?」


それでも、立ち向かう勇気のある者は爆風を押しのけこちらに迫る。腕から巨大な鎌が突き出た大柄な男と、高く跳躍して俊敏に移動する男がこちらに接近するためホール中央に躍り出た。
さらに、奥の方では何やら飛び道具系の個性を持った主犯格たちが個性を使おうとしている。

応利は燈矢と一瞬だけ目配せしてから、個性を発動する。もう言葉にしなくても、どちらがどちらを対応するか、どう行動するか、手に取るようにお互い分かっていた。


せん断応力破壊(シアーフェイラー)


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