夢が叶った先に−11
応利はせん断応力を空気越しに発動、大柄な男のマスクを破壊する。金属が破断する鋭い音と酸素が噴き出す音が響き、その隙間から低気圧を生じさせて気絶させる。
同時に、燈矢は蒼炎を奥の男に向けて放出していた。牽制のためだが、あまりの高温の炎に、何やら企んでいた男たちはなすすべなく逃げる。
さらに、応利が低気圧で大柄な男を気絶させている傍ら、燈矢は炎を出しながらスーパーボールも床に放っていた。それが着地した瞬間、応利は個性の同時使用により、低気圧で男が気絶するかどうかというところで次の個性を発動、スーパーボールの応力をコントロールして跳躍個性の男のマウスピースに直撃させた。
その直後にこちらも気圧を下げて気絶させる。
接近していた男二人が気絶したところで、燈矢は炎をかき消す。残る5人は宿泊棟へ走り出していたが、逃がすつもりはない。
「トーヤ、」
「おう」
またも言葉なく二人は意思疎通する。
そして、応利と燈矢は二人そろって手を前にかざした。
「「フレイムスネイク」」
二人の合わせ技であり、同時に個性が発動する。
すると、燈矢の右手から噴き出した蒼炎が、細く素早く前方へと進みだした。まるで透明な筒の中を通り抜けていくように、炎は拡散することなくまっすぐ男たちへと進んでいく。
これは、応利の0気圧の壁を応用したものだ。真空の壁で作られた空気の筒を応利が設定、その中を精密な制御で燈矢が炎を進めるという合体技だった。
燈矢の蒼炎の短所は、炎であるというだけで拡散してしまうこと、拡散によって狙った遠距離に炎を達成させるために出力を上げなければいけないことだった。
狙った場所だけに炎を到達させること、燈矢の炎の放出を最低限に抑えること、その二つの目的を達成するために、応利の気圧制御と燈矢の精緻なコントロールが合わさった。
真空の筒は経路を変え、男たち5人背中にある酸素ボンベを正確になぞる。そこを炎がまるで蛇のように這いまわり、酸素ボンベだけを的確に熱した。
すぐさま、男たちは「熱ィ!!」と叫んでマウスピースから口を離す。熱した空気が膨張し男たちの気道を焼いたのだ。
直後、応利の低気圧が発動。主犯格の男の「しまった…!」という絶望の声が聞こえたときにはもう遅く、5人全員が気絶した。
個性をすべて解除すると、炎が拡散する。ところどころ燃え移っていた炎は、応利がそれぞれを真空にすることで鎮圧。燈矢は少女の目元を保護するために残していたタオルを外してやっていた。
突入から僅か5分ちょっと、事件はあっという間に解決された。
「こちらパスカル、現場を制圧。人質を無事に保護しました。回収をお願いします」
『も、もうですか?!お疲れ様です!これより警察およびヒーローをそちらに向かわせます、ありがとうございました!』
無線の向こうがざわついている。気にせず、応利は少女を抱き上げた。
「よく頑張ったね。お父さんとお母さんが迎えに来てくれてるよ、一緒に行こうか」
「う、うん」
少女は少し顔を赤らめている。やはり炎の輻射熱が熱かったのだろう、可哀想なことをした。
そんな応利を燈矢がジト目で見ている。
「トーヤ、主犯格だけ拘束して運んでくれ」
「…りょーかい」
燈矢が少女を運びたかったのかと一瞬考えたが、そんなはずはないため、恐らく応利が運んでいることへの視線だろう。長時間拘束されていたのだ、燈矢は小さい子供から不人気ということもあり、応利が運ぶべきというだけの話である。
すぐに警察とヒーローが到着し、次々と倒れる男たちを拘束、搬送していく。
少女を警察に保護させ、燈矢も主犯格だと説明してから警察に引き渡した。