夢が叶った先に−12


これで二人とも手ぶらとなるため、最終報告や警察への引き渡し確認などを済ませるべくふもとのPAへと歩いて県道を下る。


「あー、帰るの面倒だな。また2時間運転すんのか…」

「泊まればいいだろ」

「明日は冬美が朝早いんだよ。夏雄も夏の大会まで朝練あるらしいし、早く帰って仮眠とって朝飯の準備しねぇと」

「ついさっきまで容赦なく敵をなぎ倒してたヤツの会話とは思えねェな」


燈矢は応利の言葉にそう言って軽く笑う。確かに、先ほどまで戦闘していたのに、今はすっかり家事を担う者としての俗っぽい会話をしてしまった。


「大事なことだろが」

「そりゃな。ま、帰りの運転は俺がすっから寝てろ」


別にいいだろう、と思っていると、燈矢はそう言いながら応利の頭を軽く撫でた。あやすようなそれに、腹が立つのと同時に安心してしまう自分もいる。
切り替えるべく、「それにしても」と続けた。


「やっぱ燈矢とバディで良かった。あの火力は絶対的だし、機動力や範囲制圧力で圧倒できる。仕事もなんでもできるし、かと思えば彼氏として配慮もしてくれるし?」


SKとしてではなく彼氏の顔で運転を申し出たことを暗に言えば、燈矢はこちらも不敵に笑う。


「当たり前だろ。お前の隣に立つのに相応しいのは俺だけだ」

「これで料理ができればなぁ」

「今のはそうだなって頷くとこだろォが」


そんな軽口を叩いていれば、すぐにふもとのPAにたどり着いた。
規制線が縮小しているためか、報道陣が山道の入り口まで来ている。


「パスカルとトーヤです!僅か5分で人質を無傷で救出、犯人12名を拘束しました!」

「破竹の勢いの二人がまたやりました!」

「ギリギリまで映っていた配信映像では、二人が一瞬で主導権を握る様が映されていました!」


そういえば、カメラのことを考えていなかった。ただ、あの炎を考えると、早々に配信は終わっていたのではないだろうか。カメラが燈矢の熱に耐えられるわけがない。

今からメディア対応をするのは正直嫌だったが、独立したてということもあり、印象は重要だ。

応利は燈矢の前に立ちつつ、メディアから規制線越しに少し離れた位置で足を止める。


「パスカル!お疲れ様でした!一言お願いします!」

「トーヤの制圧力、俺の決定力によって迅速な対応ができました。警察の捜査、地元ヒーローの協力、そして心を強く持って耐えた人質の少女のおかげです」

「犯人からのあからさまな挑発でしたが、どう思われますか!?」

「そうですね…俺もトーヤも、世間で明るみに出ているよりずっと、手数が多いんです。俺たちと戦ったヴィランたちは全員刑務所行きだし、街中では制限をかけて戦っているのであまり知られていませんが。なので、見えている限りのことで推し量って迂闊に挑戦しない方がいいと思います」


これは牽制として重要だ。事実、応利の個性は気圧を上げたり下げたりするか、応力で地面を破壊するかくらいしか、普段の街中では使っていない。燈矢も青い炎が出せるということしか報じられていない。

ゆえに、二人の本当の実力を知る者は刑務所送りということもあり、意外と二人の力は知られていないのだ。


「まぁ、どんな動機であれ、悪は悪、違法は違法です。これからも引き続き、トーヤと二人で活動していくので、応援してくれたら嬉しいです。それでは、事後処理がありますのでこれで失礼します」


にこりと余所行きの笑顔で言えば、リポーターたちも納得して引き下がる。
必要な対応はできただろう。応利は一言もしゃべらなかった燈矢とともにその場を後にした。


「よく一言も言わなかったな」

「喋ると炎上するらしいしな」

「自覚があるようで何より」


もともと燈矢に向けられた言葉もなかったため当然ではあるが、今が事務所にとって重要な時期ということもあり、燈矢は沈黙を選んだ。当たり障りことを言う分には別に喋ってもらっていいのだが、メディアもメディアで、燈矢から炎上しそうなことを引き出そうとしているきらいがある。

独立していっそう、メディア露出が増えた。注目度が上がっているときは、より慎重にならなければならない。


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