同じ地平に立つ−2


燈矢はコートをまず脱いでから、インナー姿になる。筋肉のラインがよく分かり、脱いでいるときよりも逞しさが強調されているようだった。
するりと耳元を撫でられて、ぞわぞわとした感覚が走る。


「…抵抗しねェんだ?」


すると、燈矢は片眉を上げて楽し気にそんなことを聞いてきた。勤務中にこんなことをするなと抵抗されると思ったのだろう。きっと、応利がそうすれば燈矢は止まったはず。
だが応利とて、あの週刊誌に何も思わないわけではなかったのだ。


「……あんなゴシップ、俺には確かに問題はない。でも、何も思わないわけでもない。俺のモンにコナかけやがって、とは思った」


直接的に言うのは気恥ずかしく、頬を撫でていた燈矢の手をそっと握り、燈矢の手で顔を半分隠すようにする。
それを見て、燈矢は目を見開いてから、体を倒して応利を抱き締めた。


「あァー、クソ、好きって感情に上限とかねェのな。どこまでお前のこと好きになンだろ」

「ふっ、あの女優、ダシには使えたな?」

「そうだな」


応利も燈矢もそう笑ってから、どちらともなく、そっと唇を重ねる。すぐに舌が入ってきて、応利のコスチュームのシャツにつけられたボタンが外されていく。
インナーのタンクトップ越しに胸の先をつままれ、キスされながら鼻に抜けるような声が漏れる。


「ふ、っ、んっ、」


シャツの前がすべて開けられ、タンクトップもたくし上げられる。一度口を離して体を起こした燈矢は、そんな応利を見て恍惚とする。


「は、エロ…」


まじまじと見つめられさすがに羞恥が募る。
さらにベルトも寛げられ、太もものベルトにも手をかけられる。


「いつもこのベルトやらしいなって思ってたんだよな」

「アホ」


ポーチがついたベルトは体の圧力や血圧を調節するためのものであり、重要な装置だ。
なくても問題はないが、あった方が長時間の個性の使用が可能になる。

そのベルトが緩められたことでズボンが脱げるようになり、下半身を脱がされる。いつの間にかブーツも脱がされており、下は何も纏っていない状態になる。
サイドチェストからローションを取り出した燈矢は、いつも通り応利の後ろを慣らし始める。今日は最後までするつもりのようだ。

後ろを慣らしつつ、燈矢は器用に体を倒して応利の乳首を舐めたり腹筋を舌でなぞったりと愛撫を続け、応利もすぐに高められていく。

そして10分ほどで準備を終え、燈矢はローションを同じくサイドチェストから出したタオルで拭いた。
自分のコスチュームのチャックを下ろして自身を取り出し、ゴムを装着して応利の後ろに宛がう。

燈矢がコスチュームを脱いでいないのは、単に着脱が面倒なタイプだからというだけだろうが、本当にヒーローとしての燈矢に抱かれているような感覚になる。
それにやはり胸が高鳴ってしまった直後、燈矢のものが一気に中へ入ってきた。


「あ”っ、ぁッ、はッ、」

「ふーッ、なんか今日締め付けすげェな…」


そう言いながら、燈矢はぐっと奥を押す。最近は慣らすための時間というのが短くても大丈夫なようになってきており、遠慮なく応利の中を穿ってくる。
それをただちに快楽に変換できてしまうほど、応利の体も書き換えられてしまっていた。

コスチュームを着ているため、肌がぶつかる乾いた音こそない。ベッドも新しいため軋む音は最低限だ。
だからか、ローションの水音が少し聞こえてくるのと、燈矢の息遣いがいつもより聞こえた。


「あっ、あッ!ふ、ッ、んっ!」

「は、はっ、ッ、ふ、」


腰を動かすことで、燈矢の立てている前髪の一部が少しだけ垂れる。その一房をどかすように、燈矢は前髪をかきあげた。
その仕草があまりに格好よくて、応利はつい、後ろをさらに締め付けてしまった。


「くっ、おい…!」

「しかた、ねぇだろ…!」


燈矢は持って行かれそうになったのか、勢いよく腰を連続して打ち付ける。我慢するよりラストスパートをかけた方がいいと思ったのだろう。
それによって応利も強制的に最後まで高められていく。


「あッ、あ!んっ、っあ!」

「ハ、はッ、ヤベ、出すぞ…ッ!」

「あ”ッ!あっ、きて、とうや、あっ!」


そして燈矢はひときわ大きく腰を引き抜いて最奥まで打ち込むと、盛大に中で脈打つ。ゴム越しとはいえその熱が伝わりそうだった。
一方、応利は燈矢が達する直前に白濁を吐き出し、自分の腹にぶちまけていた。

二人の荒い息遣いが室内に反射する。

まだ退勤していないのにいたしてしまった。賢者タイムに入りその罪悪感が一気にやってくるが、もともと仮眠室ではこういうことも想定していた。
ただ、それは仕事が終わったあとのことだ。今日は週刊誌のこともあったので二人揃って盛り上がってしまっただけである。

ふと、週刊誌のことで一つ思い出した。
ゆっくり引き抜かれるのを耐え、燈矢が応利の中から出ていったところでそれを切り出す。


「…週刊誌の目的だけど、もう一つあった」

「ん?」

「俺と燈矢の距離が近いと喜ぶ層のPV獲得。あいつらはこれが誤報だってすぐ分かるから、むしろ、燈矢がどう俺に絡めてリアクションするのか気になる。それを拾うためだろ」

「あぁ、そういうヤツらもいるらしいな」


手を拭きながらゴムを捨てつつ燈矢も頷く。あまりそういう方面で面倒事は増やしたくないが、そちらに誘導してしまえば、週刊誌はPVを得るためにそちらでの記事作成に追われることとなり、ネガティブなニュースにはならなくなる。


「前も言ったけど、付き合ってることを明かすのは救助活動とかで支障をきたす恐れがあるから駄目だ。でもまぁ、ちょっと匂わす程度なら、この報道をネガティブキャンペーンから客寄せパンダくらいには転換できる」

「つまり?」


具体的にはどういうことか、と燈矢が尋ねるため、今度は応利がニヤリとした。


「俺のこと以外は眼中にない、くらいなら言ってもいいぞ」

「っ!任せとけ」



その後、事務所としてはお堅い声明文を出すにとどめたが、町中で案の定マスコミに突撃されたとき、燈矢は本当にそう述べた。冗談めかした言い方であり、応利も茶化すような口調でプレスリリースの内容を繰り返した。

それによって二人の距離に萌える層が騒ぎ、SNSも交際疑惑から応利との関係の近さについて推測が飛び交い、週刊誌も女優のことなどすっかり忘れて応利と燈矢のことにフォーカスした。

付き合っている、という噂でこそなかったものの、ポジティブな取り上げられ方をしたため、むしろ七転び八起きのような結果となったのだった。


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