同じ地平に立つ−4


11月下旬、独立後最初のヒーロービルボードチャートJPの発表が行われた。
基本的に、あらかじめ順位は通知されているため、発表を見守るようなことはしていない。

普通の平日でもあったため、事務所で出張分の報告書作成と経費精算を行っていると、燈矢が自分のデスクで恨めしそうにPCの画面を睨みつけていた。


「…あークソ、何度見ても腹立つこの顔」

「いつまで言ってんだよ…」


恐らく見ているのは、今回のチャートから彗星のごとく現れた新人・ホークスに関する記事だろう。
福岡に拠点を置くホークスは、18歳でデビューするのと同時に破竹の勢いで事件解決数を伸ばし、デビューした年のうちに10位以内にチャートインしたのである。ホークスがすごい、という話は聞いていたため驚きはない。


「なァにが速すぎる男だ、人質事件で応利に勝てンのかっつの」

「逆にそれ以外では概ねホークスの方が速いから合ってるだろ」

「応利は悔しくねェの?」

「いや、俺も初登場12位でかなり快挙だしな。つか、俺あんまこのチャート興味ねぇし…」


応利の順位は12位。もともと最も有名なSKの名で知られていたため、妥当な結果だろう。今日は一日ずっと、知り合いや級友たちから祝福の連絡が止まらない。

ちなみに燈矢は今日、チャート発表からずっと取材申し込みのリスト作成に追われている。想定よりもはるかに多く、様々な媒体のメディアから取材や特集の打診が来ていた。
まとめて優先度をつけるため、燈矢には事務所宛てに届くそれらのオファーをすべて内容の精査とともにリスト化させている。
当然、問い合わせフォームには市民からの励ましや祝福も来ているため、そこから選り分けるだけでも大変な作業だ。


「つーか俺の1個下ってのも気に食わねェし…どうせ生意気なクソガキだぜこいつ」

「お前にだけは言われたくないと思うけどな」


そう言いつつ、応利の順位はもっと上だと言ってくれている燈矢の言葉は素直に嬉しい。応利としては、人質事件発生時に直行できるようほかの案件の引き受けに消極的にならざるを得ず、解決数を伸ばせないため、むしろもっと順位は低いとすら思っていた。

恋人としてではなく、純粋にヒーローとして燈矢はこう言ってくれているため、応利はそろそろ機嫌を取っておくか、と、用意していた話題を切り出す。


「まぁ、12位になったってのは要は、それだけ公安からも評価されてることの裏返しだ。つまり、とんでもない額の収入をもらってる」

「?そうだろうな」

「だから俺は、来年から暮らすために、かなり高級な物件を探してるところだ」

「ッ!」


燈矢はそれを聞いて息を飲む。
そう、応利は来年から轟家を出て一人暮らしをするために、物件を探していた。数年後には物件を購入したいため、当面は賃貸で探す予定だ。
もとは今年から一人暮らしする予定だったのが、家政婦の引退によって1年延期していた。


「そんで、来年借りる予定の家は原則として二人暮らしを前提に不動産屋に相談してる。来年はまだ、冬美を支えるために燈矢には轟家にいてもらうけど、再来年からは二人で暮らそう」


ガタ、と音を立てて燈矢は立ち上がると、応利のところまでやってくるなり腕を引っ張り立ち上がらせる。応利も分かっていたためほぼ自分で立ち上がり、引っ張られるまま燈矢の腕の中に納まった。


「…やべェ、嬉しすぎる」

「内見は一緒に行こう」

「ン。うわ、マジで好きだ応利」


機嫌は急上昇し、犬の尻尾でも見えそうなほどだ。来年は一応、燈矢は轟家に住み続けるが、合鍵を渡す予定なので、かなりの頻度で応利の家に入り浸るだろう。
そして再来年には、そこは二人の家になる。

しばらくは事務所にも轟家にも近いところがいいため、立地が最優先となる。だがその次の物件、あるいは購入する段階になったら、二人の好みなどを存分に反映できるといい。


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