同じ地平に立つ−7


1月18日、燈矢の20歳の誕生日となった。

とても良い肉を買ってきたため、夕食はステーキとしたが、部位に合わせて的確に焼き分けており、炎系個性の燈矢も満足そうにしていた。大量に炊いておいたご飯は、燈矢と夏雄、そして別室で食べた炎司によって平らげられている。最近は焦凍もよく食べるようになってきたため、そろそろご飯の量を変える必要があるだろう。

食後、燈矢には残るよう言ってあったため、察した冬美と夏雄は食器を片付けてから先に部屋へ戻った。

そして、応利は台所から酒瓶とグラス、おつまみなどの小鉢を持って居間に戻った。


「名実ともに成人したからな。ヒーローらしく遵法精神のもと今まで飲まなくて偉かったぞ」

「応利もそんな飲んでなかったしな」

「気づいたら寝る時間になってんだよな…」


酒を飲む暇のなかった応利のため、燈矢も飲みたいという気分にならず、興味はあったものの手を出してこなかった。
しかし今日は成人した日だ。飲める量の把握という意味でも、何より祝いという意味でも、お酒を出すべき日だった。


「エンデヴァーさんも冷さんもザルだし、そもそも炎系の個性はアルコール耐性が強いことも多いから、酔わないと思うけど…一応、度数低いヤツからな」


そう言いつつ、応利は座卓に梅酒の瓶とレモンサワーの缶を置いた。
おつまみは、市販のジャーキーなどのお菓子のほか、応利が作った豆腐とナッツの濃いめの味付けで作った和え物も用意してある。

燈矢は見るからに嬉しそうにしている。最近、わりと感情が表情に乗るようになってきた。感情をブロックしていた憎悪や焦りなどが晴れつつあるからだろう。もちろん、基本的に応利や兄弟の前でだけのことだが。


「最初どっちがいい?」

「梅酒」

「ん、わかった」


金持ちの家らしく、きちんとアイスペールがあるため、それに氷を入れてある。そこから大きくカットされた氷を出してグラスに入れ、梅酒を注いだ。さすが静岡県というべきか、この梅酒は轟家の自家製だ。県内の梅と、炎司拘りの砂糖を使ったもので、ホワイトリカーではなく米焼酎を使っているため、まろやかな味わいながら梅の味がしっかり出てくる。


「じゃあまずはロックな。轟家の梅酒はロックが一番美味しいんだよ」

「…お、うめェな」


燈矢は早速一口飲む。美味しいと感想を口にしてから、ごくごくと飲み始めた。


「あんま一気に飲むなよ、トータルの量と瞬間的な量だったら、後者の方が気を付ける必要がある」

「分かってる。てかこの豆腐うま」


本当に分かってるのか、と言いたいところだったが、ぱくぱくと豆腐を食べ始める顔にはまったく変化がない。赤みがさすようなことはなかった。

豆腐は大豆濃いめのねっとりした食感のものを使っている。ゴマと味噌ベースの味付けにナッツを散らしており、ネギがアクセントになったものだ。

その後も燈矢は、レモンサワー、梅酒ソーダ割り、梅酒ストレートとどんどん飲み進めていく。一応ペースは守らせているものの、やはり予想通り、まったく酔う気配がなかった。

応利のアルコール耐性は普通のため、同じペースで飲んだら今頃かなり酔いが回っているだろう。今日はさすがに少し気分が良い程度に抑えてある。

応利はそこで、座卓の反対側に座る燈矢が机の上に置いていた手をそっと握る。ストレートのグラスを傾けていた燈矢は、特に動じずこちらを見やる。
その綺麗な青い瞳は、すっかり大人になって切れ長の艶やかなそれになっていたが、癖っ毛の白い髪は幼いときから変わらない。体格はすっかり応利よりずっと厚く大きくなって、握った手は大きく逆に包み込まれ、照明に反射してピアスが光る。
それでも、7年前のあの冬の日から、変わらず応利と一緒にいたいと思ってくれていた。


「ずっと対等になりたいって言ってたよな。俺からすれば随分前から対等だったけど、今は名実ともに、俺もお前も一人のヒーローで、大人だ。誕生日おめでとう、あの日からずっと生きててくれて、ありがとう」

「っ、」


静かに述べた祝いの言葉に、燈矢を軽く目を見張ってから、ぐっと表情を引き締める。そして、より強く応利の手を握った。


「応利と生きたいと思って生きてきた。その夢は叶った。これからは、二人で生きていくだけだ」


成人するまで燈矢が生きてきてくれたことが、どれほど奇跡的なことか、炎司も冷も、冬美も夏雄も、そして応利と燈矢自身も、よく理解している。
その事実が、どうしようもなく愛しかった。


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