同じ地平に立つ−8


3月後半、賃貸契約を結んだ物件にようやく入れることになった。セキュリティ万全の中型マンションで、住宅街に建っているため見晴らしがいい。応利の部屋は12階建ての10階だ。かなり高級レジデンスであり、なかなか空きが出ないそうだ。

駐車場が地下にあること、10階から12階は専用のエレベーターがあること、何人か有名人もいて互いに干渉しない雰囲気があることがお気に入りポイントである。

引っ越しといっても、家具についてはすでに購入したものを業者が運び込んでくれてあるため、今日は燈矢とともに、轟家に置いてある応利のものや燈矢の私物、そして事前に買っておいた二人で過ごすためのものを自分たちで運び込むことになっている。

燈矢が本格的にここで暮らすようになるのは来年からだが、かなり入り浸るであろうことから、最初から食器などは買ってあるのだ。

地下駐車場に車を停め、それぞれ段ボールを持つと、専用エレベーターで一気に10階まで上がる。
部屋数の少ない廊下に出ると、わりとすぐ近くにある応利の部屋まで歩き、虹彩認証で解錠する。

内見ですでに見たことがある部屋だが、家具が入った後に燈矢が入るのは初めてだ。


「すげェ、なんか一気に家っぽくなったな」

「家具があるだけで違うよな」


家具のないがらんどうの部屋しか見ていないため、燈矢は新鮮そうにしていた。

この物件は1LDKで、専有面積はだいたい63uほど。普通の賃貸マンションの1LDKは40平米前後が一般的なため、やはり広い。そのため、かなりゆとりのある間取りになっている。

玄関はクランクインで、扉を開けてもすぐに室内は見えない。
廊下は左に曲がるようになっており、玄関を入ってすぐ左にシューズインクローゼットがあり、廊下を曲がると左の同じ区画にトイレがある。右はパウダールームとバスルームがあり、どちらもかなり広々としている。バスタブは燈矢でも足を伸ばせるほどだ。

廊下の先にリビングルームのドアがあり、中には17帖ほどのLDKがある。入って正面にカウンターキッチンがあり、カウンターに接するようにLDK中央にダイニングテーブルがある。向かって右奥側はリビングで、3人座れるサイズのソファーとローテーブル、テレビが置かれている。

大きな窓にはバルコニーがあり、その向こうには空と住宅街が見渡せる。


「食器はとりあえずテーブル置いといて」

「ん。やっぱ洋室っていいな」

「俺は轟家で和室知ってから和室の良さを実感したけどな」


完全な洋室はあの家にはなかった。互いにないものねだりだ。
燈矢が重い食器の段ボールを置いてくれたところで、応利は衣服などが入った段ボールを寝室に運び入れる。

リビング側から寝室に入ることができ、寝室は6.5帖ある。また、2帖のウォークインクローゼットもついている。
ダブルベッドを置いており、サイドチェストとサイドテーブルもある。

とりあえず段ボールをクローゼットの前に下ろしてから、リビングに戻る。テーブルでは燈矢が食器を出して並べており、応利はバルコニーの窓を開けて網戸にして空気を入れ替える。
見渡す町並みはのどかで、つい去年までパトロールしていた場所だ。


「なんか草とか植えてェな」

「草て…てか緑が欲しいとか思うんだ、お前」


いつの間にか背後に立っていた燈矢が珍しいことを言うため、からかうように言うと、後ろから抱き締められる。


「失礼な言い方してンだろ。あんな庭の中で育って、訓練は森の中でしてたんだぞ」

「ボタニストじゃん」

「ボ…ッ、ふ、」


適当なことを言うとツボだったのか、燈矢の肩が震える。応利も自分で言って、燈矢がボタニストなわけがなく、似合わなさが笑いを誘った。

まだ少し寒い3月の風を受けても、体温が高い燈矢の温もりのため寒くはない。応利を抱き締める両腕を掴んでゆらゆらと前後に揺れると、燈矢も抵抗せず揺らされる。


「じゃあ、また買い物行かなきゃな」

「そうだな」


幸せに形があるなら、今までも何度か二人は形にできてきた。しかし今は、最も強く、大きな形になったような気がした。


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