剛翼と蒼炎−3


ホテルにチェックインしたあと、公安の指示のもと、応利は燈矢を残して公安本部に赴いた。1人で来いとのことだったため指定された会議室にやってくると、ホークスが中ですでに待機していた。


「おお…さすが速すぎる男、待ち合わせには遅れねぇのな」

「ふは、なんスかそれ」


楽し気に笑うホークスは、燈矢のことで気を悪くした様子ではなかった。やはりまったく気にしていない。

時間通りに到着したため、すぐに公安委員長と側近たちがやってきた。応利は立ったまま、ホークスも立ち上がり出迎える。


「呼びたててごめんなさい。今回のチームアップについて、単刀直入に目的を伝えます」


相変わらず能面のような表情の女性だ。長話をするつもりはないようで、委員長たちも立ったまま話し始める。


「知っての通り、ホークスはデビューして日が浅い。ほかのヒーローとの協調に難があります。なので、あなたには4日間、チームアップを通して彼の面倒を見てもらいたい」

「……え、それだけ?」


裏の目的とはいったい何なのか、わりと緊張していた応利だったが、そんなことで拍子抜けする。驚く応利に、委員長は珍しく表情に呆れの色を浮かべた。


「それだけです。あなたならトーヤとエンデヴァーのことで慣れているでしょう。トーヤとスタイルも似ている。ホークスに協調性というものを叩きこんで欲しいのよ」


そんなことは学校で教えるものだ。体育祭で見たことがないため雄英の出身ではなさそうだが、ヒーロー科の学校である程度は教わるはずではないだろうか。
だがふと、デビューしてすぐ10位以内に入れるような実力者でありながら、雄英はじめ士傑、傑物などの有名校やインターンで話を聞かなかったことに違和感を覚える。

そもそも、公安委員長じきじきに、いくら破竹の勢いの注目株と言えどヒーロー1人にここまでする理由も分からない。表向きの首都圏における治安維持強化というのは重要な理由でこちらも真だろうが、それにしてもこうして話をされるというのは異例にもほどがある。一応は国の機関なのだ、1人のヒーローを贔屓するようなことはない。

そこまで考えたところで、ホークスの出自に察しがついた。公安でのホークスの役割についても。ホークスに驚いた様子がないことや、出会ってからの違和感も含め、すべての点が線につながる。


「…分かりました。彼の個性は公安からの重要な要請任務でも役に立つ汎用性の高い力ですからね、協調性を備えれば最強です。首都圏の治安維持という目的と合わせて訓練のように付き合うというのも納得します」

「……ええ。基本的には、普通のチームアップと変わりません。都内でのパトロールを行いつつ、有事の際には現場判断で対応してください」

「お話は以上でしょうか?」

「はい。よろしくお願いします」


応利は頷いて、ホテルに戻ろうと踵を返す。ホークスもついてくるが、部屋を出る直前、委員長が声をかける。


「パスカル。沈黙に感謝します」


その言葉は、応利がホークスのことを察したうえで何も言わなかったことへの感謝だ。応利は肩をすくめて返し、会議室を出た。



ホークスと並んで廊下を歩き出すと、応利は口を開く。


「にしても、トーヤを呼ばなくて正解だったな。公安で話をするときにSKを連れて行かないのはよくあるけど、あんなん聞かせたら何言いだしてたか」


いよいよブチギレだっただろう。ホークスはそれを聞いて興味深そうにこちらを見下ろした。ちなみに、応利とホークスの身長差は燈矢ほど開いておらず、2、3センチほどだ。ブーツによって差が少し大きいくらいか。


「てか、パスカルさんならSKとかいらないでしょ。個性のタイプも違うし、なんでトーヤさんをSKとして雇ってるんですか?」

「トーヤみたいな範囲型個性との相性が悪いからだな。相性の補完だよ。それこそ、ホークスの範囲+敏捷性みたいなのは天敵だな」

「そうっスかね?さすがにパスカルさんの気圧操作には速度で勝てなさそうですけど」

「まさか。俺がホークスに勝つためには、ホークスの動きを抑制することが大前提だ。お前めちゃくちゃ強いじゃん」


ホークスの活躍については、ニュース映像で見たことがある。個性「剛翼」は、その赤い羽根を1枚1枚コントロールして自在に動かし、敏捷性に極めて優れている上に範囲制圧力も併せ持つ。
褒められたホークスは羽根を1枚手に取る。


「まぁ、便利な個性だなぁとは思いますね」

「ん?あぁ、個性もそうだけど、ここまで使えるようにしたお前の努力がすげぇだろ」


どうやら個性を褒められたと思ったようだったため応利は訂正しておく。もちろん素晴らしい個性だが、1つ1つの羽根をすべてコントロールするなど途方もないことだ。それを完璧にこなしている。


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