剛翼と蒼炎−5


その日の午後から早速チームアップが始まった。
公安の公表を受けてメディアも報じており、応利とホークスの短期チームアップは途端に目を引いた。
二人が都内にいることそれ自体だけでなく、こうして報じられているだけでもかなりの牽制になる。

応利と燈矢、ホークスの3人で並んで銀座を歩いていると、すぐに気づいた人々が声をかけてくる。


「えっ!マジでパスカルとホークスじゃん!」

「ホークス初めて見た!かっこよ!」

「トーヤもいる!眼福すぎ…!」


3人ともファン層に女性が多いため女性の声が多いが、人の集まる街だけあって老若男女様々な声が聞こえた。
トーヤは相変わらず取り囲む人々に辟易としており、ホークスはにこやかに手を振っているが、サインやら写真やらに応じすぎて歩みが進まない。
いざというときに瞬時に駆け付けられるホークスらしいと言えるが、燈矢の機嫌は最悪だった。

見かねた応利は二人に注意する。


「こらトーヤ、不機嫌そうにしすぎるな。ホークスはファンサしすぎ、歩道ふさいでる」


燈矢はぶすっとしつつも不機嫌さをひっこめる。しかし、ホークスは悪びれない。


「はーい。あ、見てくださいよパスカルさん、あの焼き鳥の店うまそう。今度行きましょ」

「てめェを焼き鳥にすンぞクソ鳥」


分かっていて応利を誘ったホークスに、燈矢の刺すような目線が向けられる。その延長線上にいた人々は小さく悲鳴を上げていた。応利は無言でホークスの頭にチョップを下ろしたが、ホークスはそれでも楽しそうにしていた。燈矢とはテンションが正反対だ。

するとそこに、女性の悲鳴が響いた。


「きゃッ!やめて、助けてぇっ!!」


横断歩道を渡っていた女性のハンドバッグを、交差点を曲がってきた二人乗りのバイクですれ違いざまに奪ったところ、バッグを女性の体から引きはがせず女性が道路を引きずられてしまっている。
こういうときは、ただちに車両を停止、そしてバッグを掴む後部の男の無力化と女性の救出を同時に行い、運転手も逃走を阻止する必要がある。

3人ともやるべきことを理解しているため、そのうえで自分が最も得意とする役割を果たす。
このメンバーなら、ホークスがバイクを停止させ転倒を防止、応利が運転手と後部座席の男を無力化、燈矢が即座にバイク付近に着地して女性を救出するという流れが最もスマートだ。

そのため燈矢はすぐに炎を足から噴射してバイク付近に向かうが、ホークスの羽根がすぐにバイクを襲撃。バイクを停止させ女性を救出させると、バイクが転倒した。
道路に投げ出された二人にホークスが迫り、気絶させ、その直後に燈矢が着地した。


「どうでしたパスカルさん!」

「どうでしたじゃねェだろクソ鳥!邪魔だ!」

「俺より遅かった人に言われても…」


言い合っている二人に応利はため息をつき、道路に走り出てバイクのところまで向かうと、とりあえず二人を放って女性を助け起こす。ホークスの羽根が安全に男から引きはがしたため怪我はなく、洋服やバッグにも傷がないあたり、ちゃんとホークスは救助に重きを置いている。


「大丈夫でしたか」

「は、はい、ありがとうございます…」

「トーヤ、こちらの方を歩道まで誘導しつつ初期説明してくれ」


燈矢はホークスを睨んでから、応利の指示通り女性を歩道まで安全に誘導する。まだ道路を行き交う自動車から安全を確保しつつ、立件する場合はこのあとやってくる警察を待つように話しているだろう。

一方、応利はホークスを見下ろす。


「まずきちんと救出に重きを置いて、無傷で助けたのは上出来だ。さすがのコントロールだな」


ホークスは褒められて嬉しそうにしてはいるが、続く言葉がお叱りだと理解しているのか気まずそうにしている。


「でも今の場面なら、俺がこいつらの無力化、燈矢が救出にあたって、お前はバイクの停止と車体の維持に努めるべきだった」

「でも俺がやった方が早いですよね?」

「バイクが倒れたことで道路にちょっと穴がある。ここは国道だから国交省の道路修復が必要で、その金は税金だ。バイクが破損していたら資産価格が減耗、被害者への救済の元手になりうる資産が毀損することで女性が受け取れる賠償や慰謝料が減る恐れがある。ホークスが1人でやることと俺たち3人でやることは、時間的に大差ないにも関わらず、結果はこれだけ変わる」


淡々と述べると、さすがのホークスもばつが悪そうにした。そこに燈矢が戻ってきて、注意されるのを見てせせら笑うが、応利は燈矢にもジト目を向けた。


「トーヤ、お前さっきちょっと出遅れただろ。お前ならもっと早く到達できたはずだ。気ぃ緩めんなよ」


燈矢がそれを聞いてぶすっとするのを見つつ、応利は公安委員長が言っていたことの意味を理解する。ホークスの協調性のなさは、ホークスの実力がありすぎることに起因する。1人でなんでもできてしまうからこそ、周りの存在自体が不要なのだ。


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