剛翼と蒼炎−8
4日目、短期チームアップの最終日となった。
応利は、都内でのパトロールも慣れたものだと思っていたものの、燈矢とホークスがやいのやいのと騒ぎながら並んで歩いていることには目を丸くした。いつの間にこんな仲良くなったのだろうか。
それはファンも同じで、3人が本日のパトロール区域である渋谷を歩いていたところを目撃した人々がざわついていた。
「お、パスカルさん、あの焼き鳥屋、福岡にもあるんですけど美味いんスよ」
「お前共食いしてんじゃねェぞ鶏肉」
「材料呼びやめてくれます?コンロって呼びますよ?」
「お前焼いたらうっかり炭にしちまうかもなァ」
「火加減下手そうですもんね」
「試してみるか?」
そもそも応利や弟たち以外と長い会話をしない燈矢だ、ここまでホークスとぽんぽん会話を続けていること自体が異常だ。
ホークスもホークスで、昨日までは飄々とした掴みどころのない大人びた男だったのが、今は年相応な様子で燈矢と軽口を交わしている。気取っていないというか、飾りのない様子に見えた。
「パスカルさん、お昼つくね屋にしましょうよ」
「パスカルは俺と蕎麦屋行くんだよてめェは1人で共食いしてろ」
「どっちにするんスか!?」
「俺だろ?」
歩きながら背後からそうやって迫ってきたため、応利はため息をついて両方に軽く肘打ちする。
「うるせぇ、集中しろ。つか昼は移動がある、飯屋には行けないからな」
残念そうな声を出しつつ残念そうにしていないホークス、ホークスが選ばれなければとりあえずいいのか黙る燈矢。やはり二人とも、昨日までとは少し態度が異なっている。
それはSNSでも話題になっていた。
コンビニの前で休憩中に確認すると、3人の様子が映像とともに拡散されている。ファンの喜びの声だけではない。
「なんかホークスいつもと違うね」「年相応って感じ」「トーヤも普段より等身大だよね」「歳近いらしいよ」というコメントの数々には応利も同意だ。
剣呑さがなくなり、対等な感じがする。どういう心境変化があったのか分からないが、恐らく二人で話す機会でもあったのだろう。ここのところ毎晩のように出かけていたため、その間に話すタイミングがあったようだ。
ちなみに、SNSにはほかにも「パスカルに構ってほしそうにしてるの可愛い」「なんかんだ構ってあげるパスカル尊い」などの様子のおかしいコメントもあった。たまにいる、応利と燈矢の絡みに悶える奇特な層だろう。この層が拡大しているのは少し嫌だった。
するとそこに、身の竦むのようなクラクションの大きな音が響き、同時に急ブレーキによるタイヤの摩擦音が甲高く響き渡った。
すぐそちらに目をやれば、コンビニが面する2車線の道に1車線の道から車が交差点に突っ込んでいた。左右確認せず侵入したのか、単なる不注意かは分からない。走行していた車に衝突することはなかったものの、その代わり、こちら側の車線で横断歩道を渡っていた通行人に突っ込もうとしていた。
ブレーキがかかっているため、応利はすぐに応力を発動。
そしてそのときにはすでに、コンビニにいた燈矢とホークスが飛び出していた。
車がブレーキをかけると、タイヤは地面との間にせん断応力を生じ、これが車体を減速させる。この応力を急に引き上げることで、通常の慣性の法則では考えられない速度で車は停止する。
ぴたりと不自然に止まったときには、ホークスの羽根が通行人を引っ張って避難させ、炎で飛び出した燈矢が驚いて転倒しようとしていた高齢者を抱きかかえていた。
一瞬ですべてを解決したことで、何が起きたのかすら理解できていなかった人々は、遅れて状況を理解した。
応利は車に走り、急停車でエアーバッグが起動して無事だった運転手を助け出しつつその場で確保。ホークスと燈矢がけが人の有無を確認したところで、ようやく人々の歓声が轟いた。
チームアップが始まったときは、ホークスの独断専行や燈矢との言い合いも見られたが、今は的確にきちんと役割分担をしている。それも、ちゃんと一瞬で自分の役回りを把握・実行する速度も申し分ない。
二人とも、このチームアップが良い経験となったようだ。
のちに最強イケメン三銃士などとこっ恥ずかしい呼び名で呼ばれてしまったことだけを除けば、充実した時間となった4日間が、これでようやく幕を閉じた。