剛翼と蒼炎−9
燈矢の21歳の誕生日を迎えた、1月18日。
事前に応利の家で過ごすと決めてあったため、冬美に轟家の食事の準備は任せ、応利は仕事終わりに燈矢と直接帰宅した。
いつもなら豪勢な食事にしていたのだが、「プレゼントとしてやってほしいことがある」と言われていたため、普通の食事となっている。それはそれとして豪華なものを作っても良かったのだが、「あんま腹いっぱいになりたくねェから」とのことだった。
これは十中八九、そういうことだろう。
きっと夜の何かでしてほしいことがある、という話であるため、応利は覚悟してシャワーを浴びた。
拘束目隠しくらいなら別に大丈夫か、などと思っているあたり、自分も大概だ。
すでに燈矢は用意を済ませており、応利がシャワーを終えて寝室に入ると、ベッドの上に座っていた燈矢はこちらを見上げる。
「お、上がったか。プレゼントの頼み、聞いてくれるか?」
「…なに、頼みって」
少し警戒しながら聞くと、燈矢はその警戒に苦笑しながら立ち上がり、クローゼットから何かを取り出した。
ハンガーにかかったそれは、雄英の制服だった。
「は?それお前の制服?」
「そ。大掃除で見つけたヤツ。これ着てくんね?」
なんと燈矢のお願いとは、応利に高校の制服を着させたうえで行為に及ぶというものだった。
どっち方面の趣味でのことなのか分からず、応利は顔が引き攣る。
「……お前まさか………」
「言っとくが未成年に手ェ出したいとかじゃねェぞ。つかお前以外に興味ねェ」
「そ、そっか…」
「ただ、お前が高校生のとき、俺は小学生から中学生にかけてって感じだったし、堪能できなかっただろ」
「知らねぇよ」
まさかこんなしょうもない願いだとは思わず脱力する。だが、応利は燈矢が持っているブレザーを試しに持ってみて、やはり懸念が当たった。
「…うん、やっぱでかいな。燈矢が高校生になったときにはもう、体格で結構負けてたし、今の俺でも身長差でちょっとでかいかも」
「可愛いな…」
「ハッ倒すぞ」
応利は相変わらずの燈矢に呆れつつ、クローゼットに向かう。
奥から黒いカバーにかけられたハンガーを取り出すと、カバーを外した。
「え、それ応利のか」
「うん。俺も処分してなくて。なんだかんだ思い出っつーか…だからまぁ、使うならこっち。お前も自分の着たら?」
どうせなら燈矢も巻き添えにしてやろうと思って言ったが、燈矢はしばし自分の制服を眺め、肩をすくめる。
「入らねェな」
「……チッ」
それにはさすがに舌打ちをした。すっかり大人の男となった燈矢は、分厚い体に逞しい筋肉を纏う立派な体躯になっており、もはや高校時代の制服など入らないようだ。
腹が立つが、そんな燈矢に惚れているのだから仕方がない。
それなら応利だけか、と思っていると、燈矢は閃いたように手を打つ。
「分かった。とりあえず応利は着替えとけ」
「は?」
燈矢はそう言い残して部屋を出ていった。何事かと思いつつ、とりあえず応利はワイシャツを出して着替える。
何が悲しくて25歳にもなって高校生の制服に袖を通さなければならないのか。
着替え終わり姿見を確認すれば、サイズは少しだけきついがそこまで問題はない。だが不思議なことに、まったく高校生には見えず、白々しいコスプレ感がすごい。
するとそこに燈矢が戻ってきた。寝室に入ってきた燈矢を見て、応利は固まる。
「これでヤるぞ」
「おま…っ、」
応利が絶句してしまうのも無理はないだろう。
なぜなら燈矢は、いつものヒーローコスチュームを身にまとっていたからだ。
「こんなことでコスチューム着てどうすんだお前…!」
「でも前にコスでヤったとき、ヒーローの俺に抱かれてるみてェつって興奮してただろ。あんときは最後までできなかったし」
「だからってお前な、」
これでは本当にコスプレ企画AVのようになってしまう。抵抗しようとしたが、燈矢は気にせず応利を抱き締める。
ヒーロー姿の燈矢に抱き締められる、高校生の制服の応利。あまりに倒錯的で、思考がぐるぐるとしてくる。
「なんか、立場逆転したみてェで興奮してきた」
さらに燈矢はそんなことを言い出して、応利をゆっくりベッドに押し倒す。
前を開けていたグレーのブレザーがシーツに広がり、髪を立ててこそいないがヒーローの姿の燈矢が応利の顔の近くに手をついてベッドにのしかかる。
応利もやけくそになり、頬を撫でる燈矢の手を掴んでその青い瞳を見上げて口を開いた。
「だ、だめです、燈矢さん…!」