人生のともしび−6


焦凍の個性訓練に燈矢と二人で付き合ったり、夏雄の受験勉強を教えたり、冬美の料理のレパートリーを増やすのを手伝ったりと、轟家に関わり続けることさらに1年。

燈矢が23歳、焦凍が15歳の誕生日を迎えた1月、応利と燈矢は東京での物件の契約をようやく終えた。
この4月から事務所を正式に都内に移転し、合わせて新居として都心の高級マンションの部屋を購入するための各種契約作業だ。

事務所については今のところとほぼ変わらない構造でビルの1室を借りているが、さすが東京、ヒーロー事務所専用の物件貸出をしているビルであり、緊急出動のための屋外出口がついている。

一方、購入した住居はかなりの高級レジデンスで、2LDKで150平米という代物だ。
すでに入居可能ということだったため、先日契約を終えたあと、早速やってきた。

内見のときと同じ何もない状態だが、改めて見るとやはり広い。
燈矢はあまりの物件の高級さにドン引きだった。


「なんつーか…都心でこの広さの物件ってやべェな…」

「そりゃ億単位だしな。それに、好立地の築浅の物件で購入してるから、ローンあってもローンごと売却できる」


住みながら投資するスタイルにも切り替えられるということだ。応利はヒーローだが、もし万一のことがあった場合は、ローンが残っていても売却すれば返済込みでも利益が出て黒字を維持できるだろう。


「ほら、とっとと計測して家具のサイズとかなんとなくの配置決めるぞ。俺とお前の家なんだから」


今日は家具を購入するための準備をすることになっている。
今の家では、そういうことは応利が一括してやっていたため、燈矢と二人で行うのは初めてだ。さすがに静岡から家具を持ってくるのは面倒なため、ちょうど一人暮らしを控えている夏雄に譲れるものは譲り、あとは多くを処分する。
ベッドやソファー、テレビなどを都内で購入することにしていた。

今の物件と同じクランクイン型の玄関であり、入ってすぐ右にシューズクローク、左に靴箱がある。
廊下の曲がり角で右側にLDKの扉があり、中に入るとすぐ右手にカウンターキッチン、左にリビングダイニングが広がる。このLDKは実に36帖もある。


「いや広すぎンだろ…」

「んー…これはもう計測とかしなくても、何買っても入るな…」


どんなソファーやテレビを買っても問題ない広さだ。分かってはいたが、好きなものを買ってよさそうである。
ダイニングテーブルだけは、カウンターに合わせるために高さを調節する必要があるため、カウンターの高さや扉の干渉範囲を計測しておく。

燈矢と二人でメジャーを使ってカウンター周りを計測して体を起こすと、がらんとした広いリビングがいやおうなしに視界に広がる。


「…クソでかいソファー買うか。L字のやつ」

「これむしろでかいヤツ買わねェと、殺風景になるぞ」

「金持ちって大変だな…」


高い物件を買ったら高い家具を買わなければならない。あらゆるものの値段が吊り上がるような感覚だ。一般家庭の生まれである応利には縁がない感覚だった。

再び廊下に出て、曲がった先に進む。左手、玄関側にはトイレやパウダールーム、バスルームがある。一つ一つが広くゆとりがあり、バスタブも二人並んで入れるサイズだ。洗濯機と乾燥機を分けて配置できる。

そして右手には2部屋並ぶ。設計上は主寝室と副寝室だが、寝室として使うのは片方だけだ。


「どっちで寝ンの?」

「迷いどころだなぁ。片方は仕事部屋として使うから、寝室にするなら狭い方なんだけど、ウォークインクローゼットが主寝室の方にあるんだよな」


主寝室の広さは15帖、副寝室の広さは9帖だ。どちらもクローゼットは十分すぎるほどあるが、やはりウォークインクローゼットがある方を寝室としたい気持ちはある。

狭い方といっても、9帖あればそれだけで1つの物件を構成することも可能だ。寝室には十分すぎるほどの広さである。


「ウォークインクローゼットとしては今のとこのが広いじゃねェか。今ですら余ってンだし、業務用の方がいいんじゃね」

「まぁ…確かにそうだな。別に主寝室の方にも服置いてもいいわけだし、コート類はシューズクロークでもいいしな」


スパスパと決めてくれる燈矢のおかげで迷いも断ち切れるというものだ。
副寝室の方を寝室と定め計測、ベッド幅を確かめておき、ベッドのサイズやサイドチェストの大きさを検討しておく。

主寝室の方は仕事部屋として、二人それぞれのデスクや棚を配置する。こちらも広いため、わざわざ計測する必要はないが、一応、自然に家具を置ける壁の長さは計測しておいた。

それにしても、こうして二人でああでもないこうでもないと言いながらレイアウトを考えるのは、幸せを形にしていく作業のようで楽しい。


「あとは照明だな…」


メジャーを戻しながら天井を見上げる燈矢に、そんな気持ちが急に高まってしまい、応利はつい、その肩に頭を預けるようにして抱き着く。


「お、どうした?」

「いや、なんつか…俺今めっちゃ幸せなことしてんだなって…」

「可愛いやつ」


燈矢はふっと笑って応利を抱き締める。今はただ、この幸福に身を任せたい気分だった。


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