新たな日常−8
15分ほどしてステージの復旧がロボットたちによって行われたあと、すぐに表彰式に移った。メディアもステージ下に降りてくることができるようになり、3位から1位の生徒が再びステージに上がらされる。
あっという間に表彰台が出現しているが、本当にこの学校の技術力は謎だ。
表彰台の一番上に上がり、教員のヒーローの1人に抱えられた根津校長からメダルの授与が行われる。3位、2位と続き、1位の応利の首にもメダルをかけられた。
「3年連続総合優勝とは、すごい実力なのさ!よく頑張ったね」
「ありがとうございます」
そこに、マイクを持った実況のヒーロー教師がやってきた。
3年生の1位に対しては、インタビューとまではいかないが、一言求められるのだ。
「さて、3年連続総合優勝、それもストレート勝ちという快挙!一言もらえるかな?」
「あー、はい。この結果がつまらない、という声があることは知っています。でも俺はヒーローになるためにここにいる。誰かを救って守るための努力の一つの形がこの結果だと思っています。人を助けるために得た力なので、それで誰かを救えるなら、どんな批判を受けても構いません」
静かになった会場に、マイクを通して応利の声が響き渡る。
SNSやネットメディアだけでなく、大手のテレビ番組においても批判的なコメンテーターの意見が報じられることもある。確かに世間が期待する体育祭の有様とは違うのかもしれない。
燈矢だけでなく、同じA組やB組の生徒でさえも、このような応利への声に怒ってくれていた。応利本人は大して気にしていなくてもだ。
しかし、それ以上に、応利を応援してくれる人がいて、燈矢のように見てくれる人がいるという事実が、応利を奮い立たせてくれた。
「何より、応援してくれる人たちの声がさらに向こうを目指すための力になったから、この結果を得られました。だから俺はこの結果を誇りに思います。ご声援ありがとうございました」
そう言ってひとつお辞儀をすれば、すぐに会場は割れんばかりの歓声と拍手が埋め尽くした。マイクを教師に返せば、体育祭のすべてのプログラムが終了するというアナウンスが流れる。
これで、高校生活最後の体育祭が終了した。
その後、応利はなんと、エンデヴァー事務所から迎えに来てくれたSKの車で轟家に帰った。3年生の部の優勝者はメディアに囲まれることがあるため、炎司が気を回してくれたらしい。そういうことができるならなぜ家族に気遣いができなかったのか、と思ってしまう。
いったん事務所に寄って炎司に挨拶をしてから家に帰ったため、表彰式のあとにすぐ帰宅した燈矢たちはすでに家にいた。
玄関を開けて家に上がれば、すぐ居間から子供たちが出てきて駆け寄ってくる。
「応利君おかえり!」
「優勝おめでと!めっちゃすごかった!!」
まず冬美と夏雄がそう言いながら走ってきて、遅れて焦凍も走り寄って応利の足元に抱き着く。言葉はなかったが、鼻息荒く興奮している様子だったため、観戦していて楽しかったようだ。5歳の子供には、何が起きているのか理解するのは難しい戦闘だったと思うのだがそれでよかったらしい。
そして最後に燈矢がやってくる。
「やっぱヒーローパスカルしか勝たん」
「なんて?」
「ネットもテレビも、めっちゃ優勝コメントのこと褒めてた。マジで手のひら返しって感じ。やっぱ時代はパスカルなんだよ」
「そ、そっか…」
中学2年に上がって落ち着いたには落ち着いたのだが、テンションの上がり方が静かになただけで、様子がおかしいのは変わっていなかった。
若干反応に困ったが、応利の戦いが燈矢と焦凍に良い影響を与えられたならそれに越したことはない。
総合優勝という結果だけでなく、こうして子供たちが喜んで、燈矢や焦凍が自分の未来にも明るい何かを見出してくれるのなら、これまでの努力が報われたどころか、大切な意味があったのだと思うことができた。