新たな日常−17
季節は進み、様々なことがあった人生で最も濃い1年が、ようやく年末に差し掛かった。
世間はクリスマス一色であり、街中にクリスマスの宣伝や飾り付けが見られる。
先日、12月6日は冬美の13歳の誕生日だったが、中学なのでプレゼントはいらないと言われており、しかもケーキもクリスマスが近いのでいらないと言われてしまったため、甘いものが好きな応利としては、ようやく合法的にホールケーキを買えるタイミングである。
ちなみに、冬美にはサプライズで少しお高い化粧水をプレゼントしてやり、大層喜ばれた。
一方、そういえば轟家ではクリスマスをどうしているのだろうと疑問に思った。冷はいまだ入院中であり、家に帰ってこられる状況ではない。洋物のイベントが好きではない炎司が率先してやるわけもない。
そう思って炎司に確認すると、案の定「アメリカ被れ」といつの時代が分からないことを言われたものの、子供たちのためならば好きにしろとも言われたため、とりあえず、応利は燈矢に相談することにした。
燈矢を自室に呼び出し二人になると、早速切り出す。
「あのさ燈矢、この家でクリスマスって毎年何やってんの?」
「へ?クリスマス?改まって話って何かと思えば…」
「大事なことだろ、特に夏雄や焦凍には。冷さんもいない今、相談できるのお前だけなんだから」
こういうときには、やはり燈矢も大人枠にするほかない。長男であり、来年には中学3年生となる。子供たちのために行動するうえで、応利だけではできないことは、燈矢に頼むことになる。
そう思って言ったのだが、燈矢は「仕方ねぇな」と言いつつあからさまに嬉しそうにした。
「クソ親父はそういう西洋のイベントとか好きじゃねーから、ツリーとかはやってない。でも、お母さんが普通の家っぽくしようって、プレゼントとかケーキはやってたな」
「サンタは?まだ信じてるか?」
「いや、夏君も冬美ちゃんももうさすがに信じてない。焦凍は知らねー」
「そうか…じゃあ焦凍以外はプレゼントとかはしない方がいいか、俺が頑張ってるみたいに気を遣わせるかもしれねぇし」
「あー、うん、それはそうだと思う。ケーキと豪華な飯くらいでいいんじゃね?」
サンタを信じていないなら、プレゼントを用意したところで冬美も夏雄も応利に気を遣うだけになってしまう。それなら割り切って美味しいものだけでいいだろう。
「分かった、ありがとな、助かった。焦凍のことだけ確認しておく」
「俺にはプレゼントくんねーの?」
すると燈矢はにやりとして言った。どう見ても茶化しているため、癖っ毛越しにつむじを押す。
「お前も俺と同じ用意する側なんだよ」
「いてて、分かったって」
そしてなぜかやはり嬉しそうにしていた。子供扱いされないことが嬉しかったのだろうか。
とりあえず燈矢には引き続き協力を依頼しつつ、今度は焦凍の確認をするべく、ちょうど今晩は炎司が仕事で遅いということもあり、応利は焦凍と夕食を共にすることにした。
何度か一緒に食事をするうちに焦凍もいろいろ話してくれるようになり、焦凍から口を開く機会も多くなっている。前に夏雄の担任から教わったことも踏まえつつ、きちんとコミュニケーションを取れていた。
食事をしながらいつ切り出そう、と考えていると、意外にも焦凍の方からこの話題を出してきた。
「応利君、」
「んー?」
「サンタさんにお手紙書きたい」
「お、クリスマスのプレゼント?いいね、あとで手紙渡すよ。何お願いすんの?」
自然な流れでクリスマスのプレゼントの確認を行う。焦凍はプチトマトを食べて眉を寄せつつ、普段と変わらないトーンで答えた。
「お母さんのこと退院させてくださいって書く」
「…、」
その、なんでもないように言った純粋な願いに、すぐ返事をすれば言葉が震えると理解して、一瞬応利は黙ってしまう。沈黙するのはよくないため、慌てて味噌汁を一口飲んでから答えた。
「…そっか。でもな、サンタさんはモノを配るお仕事だから、人はダメなんだ。何か欲しいものとかないの?」
「うーん…じゃあ、オールマイト人形」
「え、そんなんでいいの?」
つい応利はまるで自分が用意するかのように驚いて聞いてしまったが、まだそういうことまでは理解できないため、焦凍は気にせずに頷く。
「前に、買ってって言っても買ってもらえなかったから」
「…なるほどな、分かった。じゃあお手紙にそう書こう」
どうやら焦凍は、欲しくても買ってもらえなかったという記憶が強かったために、オールマイトの人形が欲しいと思ったようだ。ゲームなどに興味を示さないこともあり、もともと物欲は少ないのだろう。
特に感情を高ぶらせるでもなく淡々と話す焦凍に、応利はつい、その形の良い頭を撫でた。