目標への道−11


職場体験の二日目、いよいよ炎司が燈矢を連れて町中でのパトロールに連れ出すことになった。
普段はチームに分かれて対応しており、応利はほかのSKと行動することが多いのだが、今回は燈矢についているため、自然と炎司とも一緒に行動することになる。

家族関係が終わっている、というのはSKたちもうっすら知っているようで、親子に挟まれる応利に憐憫の目が向けられていた。

応利は更衣室で準備を終えた燈矢が出てきたのを見て手招きする。
昨日、なぜか燈矢は少し挙動不審だった。脱衣所で頭に触れたのが嫌だったのだろうか。ふわふわとして触り心地が良さそうだったため、つい触れてしまったが、こうして体育祭で優勝し職場体験に参加するほどに成長した燈矢にとっては不快だったかもしれない。

きちんと距離感を間違えないようにしなければ、と反省している。

ただ仕事は仕事だ。応利は特に昨日のことには言及せず、コスチュームに着替えた燈矢を自分のデスクまで来させた。


「今日のパトロール範囲の確認するぞ」

「…あぁ」


やはり少しだけ反応が鈍いが、さすがに昨晩ほどではない。ちゃんと切り替えられる様子だ。
これくらいならいいか、と応利は話を進める。


「エンデヴァーさんのパトロール範囲は市内中心部。といっても、やみくもに動き回るというよりは、高所から町全体を俯瞰して、必要なときに急行するスタイルだな。治安維持って意味でのパトロールはSKが道を練り歩くことで行ってる」

「応利は?飛べねェだろ?」

「俺は駅前とか繁華街の狭い道、上空のエンデヴァーさんからは死角になる場所をパトロールしてる。ただ、今日はエンデヴァーさんが地上でのパトロールにあたることになってる」


まだ燈矢は市街地で自由に炎を足から出して飛び回らせるわけにはいかない段階だ。実力的にはやってできないこともないだろうが、万が一街灯や建物に損害を出してはまずいことになる。
今回は炎司が地上に降りて活動する。そう判断したのは炎司であり、ちゃんと指導しようとしている姿勢に驚きっぱなしだった。

そして応利は担当として一応言っておく。


「分かってると思うけど、免許がないから個性を用いた戦闘や拘束、あるいは医療行為などは原則として認められない。市民やほかのヒーローに、命に関わる重大で緊急の事態が生じたときのみだ。基本的には俺やエンデヴァーさんの指示を仰ぐこと」

「分かってる」

「あと、油断はしないように。俺の二個上の先輩には、インターン中に亡くなった人がいる。職場体験でもインターンでも、死ぬときは死ぬからな」


じっと燈矢の青い瞳を見つめて言えば、燈矢は素直に「分かった」と答えた。茶化したり適当に答えたりはしないあたり、ヒーロー活動に対しては至極真面目でいてくれていた。


「じゃあ行こうか」

「…やっぱ嫌になってきた」

「それならやめるか?」

「やめない、逃げるみてェで嫌だ」


これから会いに行くのが父親だからか、燈矢は露骨に嫌そうな顔をした。それに苦笑しつつ、燈矢を連れて執務室に入る。
ノックして扉を開ければ、仁王立ちしていた炎司が出迎えた。


「準備はできたか」

「問題ありません。巡回ルートも確認済みです。車出しますか?」

「いや、徒歩で十分だ。その程度の体力もないわけではないだろう」


じろりと燈矢を見る炎司に、燈矢は睨み返す。バチバチとしたエフェクトが目に見えそうだ。応利はため息をつく。


「エンデヴァーさん、いちいち煽らないでください。燈矢も終始ガンを飛ばすな。予定時刻を1分超過しました、行きますよ」


炎司には指導しようという意思が、燈矢にも学べることはすべて学んでやろうという気概が、それぞれあるにはあるのだが、それ以前に反目しあっているため空気は険悪だ。というか、燈矢の方から「余計なこと言うな」というオーラが出ている。

その後、パトロール中に応利が二人をとりなす回数が15回を超えたあたりで、応利は諦めて放置することにした。そもそも業務外のタスクだろう。


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