それぞれの想い−2


12月に入って冬本番となったころ、クリスマスが意識される時期に、焦凍と二人で食事をとっているときのことだった。
この日、炎司は夜勤で冬美は学校行事で遅くなるため、応利と焦凍の二人となっていた。そろそろクリスマスも近いため手紙を準備するべきか、あるいはそろそろサンタはいないという事実を伝えるべきか、とちょうど悩んでいたところに、焦凍がその話題を切り出した。


「応利君、」

「ん?」

「サンタさんいないって、ほんと?」


タイムリーに質問されたため、応利は軽く驚いた。クラスでもクリスマスの話題になっていたのだろう。隣に座る焦凍を見つめると、焦凍はつぶらな瞳でこちらを見上げていた。


「…誰かが言ってたの?」

「うん。クラスの子が、サンタさんは本当はいないんだって」


親としてはこういうとき、複雑な気持ちなのだろう。勝手に自分の子供に何を教えているのかとか、サンタの事実を明かすにしてもクラスの子に吹聴しないよう言い含めておけとか、不満を感じることもある一方、代わりに言ってくれてありがたいという側面もあるのかもしれない。

親ではないのに親の気持ちがなんとなく分かってしまう。応利としては後者寄り、代わりに話題に出してくれたことへの感謝の方が強かった。


「…うん、そうだよ。サンタさんは本当はいないんだ」

「じゃあ、プレゼントくれたの、応利君?」


2年生ともなれば、状況からそれなら親、ここではそばにいた大人である応利だろうと考えが至る。成長を感じつつ、素直に答える。


「そ。俺が焦凍のお願いを確認して、お父さんがお金を出して、俺が買ってきてたんだ」

「そうなんだ」

「サンタさん、いて欲しかった?」


焦凍はあまり残念そうにはしていない。やはり2年生なら「まあそうか」くらいに思っているのか、それとも別にサンタに拘りはなかったのだろうか。
そう思って聞いてみると、焦凍は首を横に振る。


「ぼくでもプレゼントがもらえるんだって思ったら嬉しかった」

「焦凍はいい子なんだから来るに決まってんじゃん」

「ううん。お母さん入院することになっちゃったもん」

「な…、それは焦凍のせいじゃない。焦凍はいい子だよ」


自分のところにもサンタが来てくれることが嬉しかった、という言葉に、応利は胸が苦しくなる。
どうやら焦凍は、冷が入院する事態になった原因が自分にあると思っているようで、だからこそ、自分はサンタが来るようないい子ではないと考えていたらしい。

焦凍はいまだに、学校でもうまく友達付き合いができていない。先ほども「友達」ではなく「クラスの子」という言い方をしていたことからも明らかだ。
遠足に行ったときも、遠足で体験したことは話してくれたが、友達とのことはほとんど会話に上がらなかった。それを指摘してしまうと傷つけるかもしれないと、応利もそこについては触れて来なかった。

入学当初から炎司の訓練によってまともにクラスメイトと遊びに行くことなどできず、家庭での発話量が多くないため会話もぎこちない。
もともとの焦凍の性格も、温厚で口数が多くはないものであるのだが、それに輪をかけて、人とのコミュニケーションに必要なスキルが欠落していた。

父親がエンデヴァーでなければいじめられていたかもしれないが、炎司が父親でなければそもそもこうなっていなかった。


「焦凍はいい子だ。俺の自慢だよ」

「…うん」

「サンタはいないけど、クリスマスのプレゼントは俺が用意するよ。何がいい?」


形の良い頭を撫でて尋ねると、焦凍はそっと、応利に抱き着いた。


「欲しいものなんてない。一緒にいて」

「…そっか。分かった、俺がついてるよ」


欲しいものを聞かれて答えられないことも、追い詰めてしまう要因になる。それ以上食い下がることはせず、ただ、焦凍を抱き締めた。


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