消えない過去、生きたい未来−14
宇治でゆったりとした時間を過ごしたあと、二人は京都市内に戻り、祇園の天ぷら料亭で夕食を取った。
こんなにも長い時間二人きりで過ごしたのは初めてのことで、こうして2食続けて一緒に夕食をとっていることが、ようやく新鮮に感じられてきたほどだ。
食事を終えてホテルに帰着し、部屋に戻る。清掃が入っているため、チェックイン時と同じようにベッドメイキングされていた。
さすがに昨日のような緊張はない。応利としては今日もOKだが、そこは燈矢の気分次第である。しばらくシッティングスペースで座って今日の感想を話したり、ニュースに上がっているオールマイトの活躍やエンデヴァーの仕事のことについて話したりと、他愛ない会話が続く。
やがて20時半を回ったところで、燈矢が先にシャワーを浴びに向かう。
20分ほどで出てきたが、まだ浴室からは水の音がする。
「あれ、湯舟入れてる?」
「あぁ。サイクリングもしたし、結構歩いたからな。俺はともかく応利は入りたいだろ」
「気が利くな、ありがと。ちょっと入りたかった」
まだ夜は冷える3月末だ、湯舟を入れてくれているのは素直に助かる。
お湯が溜まるのを待ってから応利もシャワーを浴び、軽く湯舟に浸かった。
その後、一応、念のため、となぜか自分に言い聞かせるようにして、今日も準備をしておいた。洗浄を済ませてから浴室を出て、体を拭いて髪も乾かし、様々支度を終えてから脱衣所を出る。
時刻はまだ21時半過ぎ、寝るには早い時間だ。昨日は実質、応利が誘うような形となったため、今度は燈矢に誘わせようと自分のベッドに腰かけた。
燈矢も自分のベッドに座っているが、二人とも、2台のベッドの間に足を下ろし向かい合って座っているため、膝が触れそうな距離になっている。
燈矢はスマホを置くと、すっと応利の膝に手を滑らせる。明らかな意図をもった動きだ。
応利が拒絶しなかったのを見て、燈矢は応利の左隣に移動する。そして肩を抱きながら囁くように尋ねる。
「昨日は必死過ぎてお前のこと甘やかせなかったから、今度は可愛がりてェんだけど、いいか…?」
「なっ、」
どんなことを言うのかと思ったら、まさかのそんな表現で、さすがに顔が赤くなる。応利の反応を見て燈矢は気をよくしたのか、左手で応利の頬を撫でて自分の方を向かせた。無理やりなどではないのに、なぜか逆らえず、なすがままに燈矢を至近距離で見上げる形となる。
その青い瞳は、どろりとした重く強い感情が滲み出るかのように応利を見つめている。鈍く鼻ピアスが光り、長いまつげが影を落とし、あまりに端正な顔立ちが迫る。
誘われるがまま唇が重なる。まるで逃がさないとでも言うように、肩を抱く力が強まり、割り入ってくる舌が応利の舌先を絡めとり痺れるような快感が走った。
こいつは本当に昨日が初めてで、昨日の今日でここまで手慣れたことができるものなのか、と、何においてもセンスの良さで平均以上にこなす燈矢のスペックを改めて思い知らされる。
音を立てて舌を吸われ、舌の付け根が引っ張られて快感の信号を発する。
さらに、Tシャツの裾から手が侵入し、応利の腹筋を撫でてから胸板に到達すると、焦らすように乳輪をなぞる。弱く核心に触れないような刺激に体が震え、縋るように燈矢の肩に手を置く。
燈矢はそこで口を離したため、応利は燈矢の肩に顔を埋めるように抱き着いた。体重も預けてしまっているが、燈矢は応利の上体を難なく支えている。
そのまま応利の耳元に唇を寄せると、ふっと軽く息を吹きかけた。
「ぅあッ、」
思わず反射で声が出て、さらに深く抱き着いてしまう。なおも燈矢は、耳梁に舌を這わせてきて、水音がダイレクトに鼓膜に響いた。ビクビクと震えながら燈矢に縋りついていると、油断していたところに、急に乳首を指で弾かれた。
「あっ、ひぅッ、ん!」
「応利の感じてる声、ずっと聞いてられるなァ」
「ふざ、け、んッ、ぁっ、」
急に何を言っているのかと思ったが、胸先を弄る指は止まらず、声が出てしまい言葉を続けられない。
さらに、燈矢は応利のシャツをたくし上げると、さらされた胸元に舌を這わせた。それはすぐに乳首に至り、生暖かい咥内に吸い込まれる。強い刺激に、昨日よりも明確に快感を拾った。
「あッ、んっ、ぅあっ!」
「やっぱ感じやすいよな、応利。かわいい」
そう言いながら、燈矢は応利のジャージの中に手を突っ込み、下着から指を差し入れて応利の自身の先を弄る。直接触られる刺激に、自然と足を閉じようとしてしまう。
だが応利もやられっぱなしというわけにもいかない。応利とて昨日は燈矢のものを触るのを我慢していたのだ。
「っ、とうや、俺も、とうやの、触りたい」
「…っ、わかった」
燈矢は履いていたジャージを下ろす。下着越しに屹立したものを触れば、燈矢は息を詰めた。こうしてみるとやはり大きい。
それを下着から引っ張り出すと、燈矢も自分で下着を下ろしてくれた。
応利は興味が湧いて、いったんベッドの下に降りて膝をつくと、燈矢の足の間に入ってその逸物を口に含んだ。
突然の口淫に燈矢は驚く。
「っ、おい、そこまでしなくても、」
「俺がしたいだけ」
そう一言だけ返してから、咥内で先に舌を纏わせる。長く太いそれを咥えるだけで顎が外れそうだ。筋肉が盛り上がる太ももに手を置いて、必死に舐め上げる。
燈矢は呼吸を荒げつつ、応利の頭を撫でた。
昨日もそうだったが、誰かに頭を撫でられることなど滅多になく、ほかならぬ燈矢にそうしてもらえていることもあって、応利は嬉しくてその手にすり寄る。
応利が喜んでいると分かったのか、燈矢は小さく笑って、応利の耳元をくすぐるように髪を撫でる。
軽くそうして戯れてから、燈矢は応利をベッドの上に戻し、応利の服もすべて脱がして押し倒す。
自分のローションボトルを取り出して、応利の後ろを昨日と同じように丁寧にマッサージしながら、再び応利の胸元を舌で弄る。
やはり昨日よりも、お互いに余裕があった。緊張もほぼなくなっており、そのせいか、応利は快楽を拾いやすくなっており、燈矢は応利の反応を楽しむようになっていた。
「応利、もっと甘えろ」
「は、え…?ど、うすりゃ、いいんだ…?」
後ろを解されている間、唐突にそんなことを言われる。具体的にどうすればいいのか言ってもらわないと分からなかったが、燈矢はそれを明らかにするつもりはないらしい。
いや、甘えようと思って応利がとった行動ならすべて受け入れる、ということなのかもしれない。