消えない過去、生きたい未来−15
少し考えてから、応利は右隣のあたりを叩く。
「…くっついてたい」
「お、かわいいなそれ。いいぞ」
これで良かったようで、燈矢は応利の右側に体を横たえつつ、腕を応利の首元に差し込む。枕なしで仰向けになり続けるのはしんどい部分もあるため、首を燈矢の筋肉質な腕が支えてくれると安定する。
その状態で後ろをほぐす作業を続け、応利はもっと肌が触れるところを増やそうと燈矢の二の腕に顔を寄せる。燈矢もそれを受け入れつつ、戯れに応利の上体のあちこちにキスを散らした。
そして後ろの準備を終えると、燈矢はいったん起き上がり、ゴムを装着する。
自身を応利の後ろに宛がい、「入れるぞ」と言ってから、ぐっとそれを押し込んだ。
昨日よりもすんなり入り、奥まで一気に入ってくる。相変わらずぎっちりと中を埋められるようなそれに、まだ圧迫感や苦しさはどうしてもあるが、痛みは薄れていた。
「っは、はッ、やっぱ、でか…」
「すげェ締め付け」
「腹、いっぱい……」
つい下腹部を押さえてそう言うと、燈矢は一瞬動きを止め、長く息を吐き出した。
「ハァーーー……ほんッと煽るの得意だな」
勝手にそっちが煽られているんだろう、と言ってやりたい気持ちもあったが、それを言うと何をされるか分からないため黙っておく。
その代わり、燈矢に向けて手を伸ばした。
「ん、」
「聞いてねェし…ま、かわいいから許す」
勝手に煽られ勝手に許した燈矢は、応利の無言の要望を聞き入れ、体を倒して応利を抱き締める。
燈矢の背中に手を回して、燈矢は応利の頭を撫でながらキスを落とす。
応利の体が慣れるのを待って、燈矢はゆっくり動き出した。ただ、昨日よりも早いペースで腰の動きを加速していく。
「ぁッ、あっ、んッ、あぁっ!」
腰を打ち付けられる度に声が漏れ、なだめるように頭を撫でられる。ぎゅっと抱き着いて快感の波から逃れようとしても、抱き締められているため、脊髄を走り抜ける快楽の電流は容赦なく脳天を揺らした。
引き抜かれる幅と、それによって奥を穿たれる深さが増していき、肌がぶつかる乾いた音が連続する。たまにローションを足して滑りをよくしてくれることもあって、いやらしい水音も合間に響いていた。
「はッ、はッ、かわいいな、応利っ、」
燈矢は熱に浮かれたようにそう言いながら、応利をシーツの上にかき抱く。大きな手の平が後頭部と背中に回り、頭を掴み体を押し付けるように思いきり抱き締められる。体が密着し、より深く奥まで入ってくるようになり、応利は視界がチカチカとする。
「ぅあ”ッ、あッん、あっ!」
必死に背中に回した手で燈矢の厚い体に抱き着き、肩に顔を埋めて衝撃に耐え、全身を迸る快感に負けないよう意識を保つ。
それでも昂ぶりは抑えきれず、応利の自身が燈矢の腹筋と応利の腹筋に挟まれ押さえつけられている刺激もあり、先に応利は果てた。
「ぁッ、だめ、イく……ッ!!」
「ぐっ、はッ、やべ、もってかれる…っ!」
ぎゅっと後ろを締め付けると、燈矢も呻くように言いながら腰の動きを一気に早める。
「く……ッ!!」
そして燈矢も応利の中で果てる。激しい脈動を中で感じつつ、応利は必死で呼吸を整え、燈矢も呼吸を深くしていく。
呼吸音だけになると、この部屋はこんなに静かだっただろうか、と疑問になるほどだ。
強い快感と声を出していた酸欠とでくらりとする。視界は元に戻ったが、頭はまだぼんやりとしていた。
荒い息のまま、燈矢は自身を引き抜いて、応利の体をタオルで拭いてゴムを捨ててから抱き締める。
「…昨日今日と、頑張ってくれてありがとな、応利」
「んー…」
優しく燈矢は礼を述べ、応利は首を横に振りつつ燈矢の腕の中で胸元にすり寄る。多幸感とはこういうことを言うのだろう。思考がおぼつかないが、心も体も満たされた、と実感できた。
ふと、甘えろと言われていたのを思い出す。体を綺麗にするためシャワーを浴びなければいけないが、まだ湯舟にお湯は張ったままだ。
「…燈矢、風呂、一緒に入ろ」
「風呂?…あぁ。分かった、連れてく」
燈矢も湯舟にお湯を満たしたままと理解したのか、すぐに応じて応利を抱え上げる。3度目となる横抱きだが、もう抵抗する理由はなかった。
器用に狭い脱衣所を抜け、浴室に入る。滑らないよういったん応利を下ろして湯舟に入れながら、燈矢も入る。
そうして、湯舟に入った燈矢にもたれるように応利もお湯に浸かった。二人分ともなれば一気にお湯があふれて出ていき、湯舟いっぱいに水面がくる。
燈矢はてきぱきと湯舟の中で応利の体のローションを落としていく。されるがままで燈矢に寄りかかっていると、もっと広いお湯に浸かりたい気分になった。
ただ、会話をするには疲労もあって声が出しにくい。心地よい疲労感に寝そうになるが、燈矢はあまり湯舟を好まない。
程よいところで二人は風呂を出て、ちゃんとボディーソープで洗ったあと、またも同じベッドで眠りにつく。もうすっかり、二人の間に距離はなくなっていた。