地雷はそこに
●時間軸は適当
切島目線の轟双子
寮の談話スペースにて、切島は上鳴、灯水、焦凍と駄弁っていた。夕飯も風呂も済ませ、それぞれ課題も終わってリラックスムードだ。あとは寝るだけである。
ふとそこへ、灯水が切島たちに話題を振って来た。
「そういえばさ、切島君と上鳴君、趣味ってある?」
「趣味?俺はボクシングとかだけど、これ!ってのはねぇな」
「俺は結構あるぜー、バスケとか、スケボとか、一時期DJとかもハマったな〜」
「あからさまにモテ狙ってんな」
「うるせ」
女子受けの良さそうなものを並べる上鳴を茶化すと、その自覚はある上鳴が肘打ちする。轟兄弟はそれが女子受けすることを知らず感心していた。
「そういう判断基準もあんだねぇ…でも難しそうだな」
「灯水は?趣味とか聞いたことねぇかも」
上鳴は普通の会話の流れで聞き返す。灯水は「あー」と少し言いづらそうに苦笑した。
「ほら、俺の人生こいつのためにあったから。そういう自分はこう、ってのがなくて、それで皆に色々聞いてるとこなんだよね」
「ああああああああ」
うっかり地雷を踏みぬいた上鳴は頭を抱えた。当の本人たちは何とも思っていなさそうだ。
それにしても、こんなちょっとした趣味程度のところでまで灯水はおざなりにしていたのだと思うと、本当に深刻だったのだな、と切島は改めて感じた。前向きになっているのでまだ救われるが、とどめを刺したのが自分たちということもあの夏に聞いている。
「とりあえず口田君とは話すって名目でウサギをモフってきた。八百万さんからは紅茶教わってるとこ。緑谷君は…まぁ後でいっかなって」
「あー…うん、そだな」
「飯田君もなんかドストエフスキーとか勧めてきそうだし、麗日さんはこの前節約が趣味って言いながらポケットに食堂のふりかけ忍ばせてたし、青山君は光り物で常闇君は闇でしょ?」
「このクラスやべぇな」
色々と考えているらしい灯水は、意外とクラスのメンバーのことを的確に見抜いていた。確かに、迂闊なことは聞けないな、という者が多い。思わずやべぇ、と言ってしまったが、上鳴も頷いていた。
「普通そうなのやっぱ尾白とか、あと芦戸とか葉隠も普通の趣味持ってそうだよな」
「分かる、女子は芦戸・葉隠あたりが女子女子してるかんな」
「尾白君は武闘、葉隠さんはインストで好きな芸能人追いかけることって言ってたな」
そういえば灯水はその2人と仲が良かった。切島はのほほんとした空気で楽し気にする3人の姿を思い出す。灯水は飯田や焦凍といるか、その2人といるかどっちかなイメージがあった。
「まああとあれだろ、砂藤と瀬呂」
「あぁ、料理男子とインテリア男子な」
そこで上鳴が挙げると、切島も確かにと思った。灯水もそう思ったようで、後で声をかけることにしたそうだ。
「にしても、世間一般はどんな趣味が多いんだろ」
「やっぱあれだろ、キャッチボール」
「あぁ、確かに」
すると灯水は、普通とは何かが気になったらしい。そこで上鳴が、ボールを投げる仕草をしながらすぐに言った。切島も、野球やキャッチボールの類は確かに多いような気がする、と漠然と思う。
「よく親父とやったよな」
「そういうの定番だもんな」
「…そうなのか?」
2人で頷きあうと、焦凍が首を傾げた。そうだ、この2人の父親エンデヴァーはそんなことをするヤツではなかった。
「「ああああああああ」」
今度は2人で頭を抱える。またやってしまった。普通じゃない生き方をしてきた2人なのだ、うっかりとんでもないことをしてしまった。
それにはさすがに灯水も気づいたらしい、慌ててとりなしにかかった。
「ほ、ほら焦凍、焦凍はマシじゃん、言葉のキャッチボールできるし!俺はわりと無視されること多いからさ」
「ああああああああ」
そして今度は焦凍が頭を抱えて沈んだ。言葉のキャッチボールもできないなんて、と切島と上鳴も沈んだまま回復できない。
そんな3人を灯水を不思議そうに眺め、通り過ぎた爆豪が「キメェ」と一言吐き捨てて、その夜は解散となった。