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昼休みが終わると演習の時間となる。
相澤とオールマイトの監督のもと、A組はグラウンドβに集まる。オフィス街、商店街などの商業区画として作られた広大な場所で本日行われるのは、なんと1対1の戦闘訓練だった。


「1対1、ヒーローと敵に分かれて戦ってもらう。とは言っても分かれるのはあくまで戦闘の終わり方を定義づけるためだ。平たく言えば、単なるタイマンだな」


相澤自身が認めた。オールマイトも頷く。


「そろそろ必殺技も固定してきたことだろう。しかし、いざ戦闘となると咄嗟に出て来なかったりする。アウトプットは学習の基本、まずは1対1、慣れてきたら集団戦闘の形でどんどん使いこなせるようにしていこう!」

「今日は初回ということもある、まずは必殺技や戦闘スタイルが似ている者どうしで組む。遠距離には遠距離、体術なら体術という形だな」


2人の教師の説明に、面白そうだとやる気が沸くA組だが、ふと一同は相澤の説明にあることを思い出す。
いまだくすぶり続ける、2人のことを。まさか、と思っていると、オールマイトが組み合わせと順番を告げる。
最初は体術など近接型から、そして後半は遠距離型だ。


「そして最後、轟兄弟!」

「「……」」


恐れていた事態に、切島などのこわごわとした目線が2人に向かう。2人は離れたところに立ち、目も合わせないが、纏う空気がぴりっとした。そんなことは気にせず、オールマイトはさっそく最初の組み合わせである尾白と砂藤の名前を呼んだ。


***


灯水はグラウンドβの中央を貫く大きな通りに立つ。少し離れた正面には焦凍がいる。グラウンドの外では、モニターでA組がこちらを観戦している。
この前に、爆豪と上鳴が戦ったため、街路はとこどろどころ破損している。戦い方によって破壊される範囲が変わるため、後半が遠距離型になっているようだ。


「……決着つけようか、焦凍」

「悪いが、勝つのは俺だ」

「あっそ」


離れたところにいても、互いの声が聞こえるほど静かだ。2人のピリピリとした空気は、クラスメイトたちも当然理解していて、2人がグラウンドに入っていくのを心配そうに見ていたのを覚えている。


『それでは準備はいいかな!?3、2…』


オールマイトの声が響く。灯水は先手に備えて構える。それぞれが別個のスタイルを確立させた今、かつての屋内対人戦闘訓練のときのように、互いの手の内は分からない。だから、最初から全力だ。


『…1、スタート!!!』


そしてその声が聞こえた瞬間、灯水は足から大氷結を放った。通りをまっすぐ焦凍に向けて、街灯や街路樹を飲み込みながら聳え立つ30メートルクラスの氷壁。
それは、焦凍も同じことだった。

2人の放った巨大な氷結は、2人の中間地点で轟音とともに激突した。氷の発する鈍く乾いた音と、衝突してもなお圧力がかかることによって軋むうめき声のような音。
直後、35メートルほどになってぶつかった氷壁は、互いの押す力に耐えられず真ん中あたりから崩壊した。
まるで氷河の崩壊のように砕け、へし折れる壁。それは周辺のビル群に落下し、建物がゆがんでガラスが割れる鋭い音が辺りに満ちた。大きな破片が直撃したビルはコンクリートが破壊されて道路に落ちる。

その頃にはすでに、灯水は蒸気によって飛び上がり、氷壁を回り込んで焦凍のところに向かっていた。
焦凍が視界に入る前に、壁の向こうから炎が迫る。一瞬のそれは、うまく氷の壁によって熱と光を感知させないようにこちらへ向かっていた。それに手を翳し操ると、焦凍から引き出すように炎を空中に向けて吹き上がらせる。

巨大な炎の竜のようになったそれは、氷の壁を溶かし、ビルのガラスを熱で砕き室内に引火させ、焦凍へ襲い掛かる。
焦凍は炎を出すのをやめて、再び氷結によって炎の竜をかき消した。
その急激な温度差によって昇華した氷は、体積を数千倍に増やして水蒸気となる。その体積の膨張は、衝撃波となって、水蒸気爆発という現象に変わる。

爆豪の放つ爆破とはまた違う、ゴオッという暴風のような音を立てて爆風が広がり、ビル群の一部を吹き飛ばす。爆風よりもビルが崩壊する轟音の方が大きく、コンクリートどうしが激しくぶつかる音が響き渡った。

ここまで僅か2分程度だったが、すでにグラウンドの中央部は壊滅状態となっていた。


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