お誘いは計画的に


●夢主が誘う話
R指定ではないですが全体的にそういう話のため注意



灯水と焦凍が、恋人という関係を自分たちに追加してからかなり経った。八斎会との戦いなど大変なことは多くあったが、関係性としては穏便に進んでいる。

しかし最近は、あまりに穏やかすぎるのではないか、と思うようになった。言ってしまえば、恋人になる以前とそう大差ない生活なのだ。

もちろん、寮生活という制約はある。それでも、もう少し、恋人らしい時間があってもいいのでは、と思う。
端的に、有体に言えば、夜の行為である。

灯水だって健全な男子高校生、そういう欲だってある。上鳴や峰田に比べたら薄いのかもしれないが、それは比較の話であって、ないわけではないのだ。

それなら焦凍に言えばいい、ということになるし、別に焦凍がいわゆる男役だからといってそういうところまで任せきりにする必要もない。灯水とて女性のような恥じらいでもって過ごしているわけでもない。
ではなぜ焦凍に言わないのかといえば、単純に恥ずかしいからだ。

確かに女性のような淑女的恥じらいではない。灯水は男で、男だが、女役だ。
つまるところ、焦凍に誘いをかけるというのは「突っ込んでください」と言っているのと同じわけである。

もともと同性を好きになる余地のあるタイプではないため、抱いてくれ、なんてことをはっきりと言うのはさすがに抵抗がある。とどのつまり、恥ずかしくてそんなこと言えるわけがない。
初回は焦凍が無理やり組み敷いてしまったことへの自責の念があまりに強かったため、勢いで言ってしまえたが、落ち着いた今は無理だ。

そこで、言葉が無理なら態度で示そうと思い至った。そういう雰囲気を醸し出して向こうからしかけさせるような形だ。言葉にせずとも伝わるだろうと、そう思っていた。
しかし、相手は轟焦凍、鈍感天然王子様だったことを、すっかり灯水は忘れていた。



***



まずは同じ布団で寝るとき。
寝る間際が最もそれらしい空気になって自然なタイミングだからだ。
灯水は、隣で横になっている焦凍の腕を掴んで、二の腕に額をつけた。腕に抱き付くような姿勢である。


「…どうした?」

「…、いや…」


煮え切らない返事をするも、焦凍は甘えられていると思ったのか、灯水の頭を優しく撫でて、そのままスヤァ…と眠りに落ちた。
あながち間違いでもないし、撫でられる感触は心地よかったのだが、違う、そうじゃない。

そんなことが数日あった。

それなら、と灯水は布団を敷いているときにタイミングを速めた。焦凍の意識レベルが高いうちに、という意味である。


「焦凍、明日、俺もお前も休みじゃん?」

「そうだな」

「じゃあさ、夜更かししてもよくない…?」


そう言いながら焦凍の服の裾を掴む。くい、と引っ張って、それらしくしてみた。


「……いや、生活リズム崩すのは良くねぇだろ」

「………そうだね」


ごもっともなお言葉に黙るしかない灯水である。そうしてその日も普通に寝て普通に起きた。

そんなことも数日あった。


かれこれ2週間近く、そんなことが続くと、もはや苛立ってきた。そんなに魅力がないか自分は、と灯水はむしゃくしゃとして、文字通り悶々としていた。
とはいえ、直接言葉にする勇気がない灯水の問題でもある、ここは、次をラストチャンスにして、それでもだめなら言葉にしよう、と決めた。


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