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無言のまま朝食を終えたショートは、自室で少し休んでから鍛錬に励むことになっている。その前に、ショートは1週間に1度いつもやっていることがあった。
「今日は変わりねぇか」
「ショート殿下、」
それは、王城にいつも薬を届けにやってくる同い年の少年、デクから王都の情報を聞くことだった。
もじゃもじゃ頭とそばかす以外はいたって普通の薬剤師であるデクだが、実はデクも力が弱小ながらマギであり、いつか旅に出ることを夢見ていた。
デクは薬売りとしてよく王都に出ているため、情報通でもある。ショートが唯一、気兼ねなく話ができる同世代だった。ただ、もちろん平民であるデクを友人と呼べば、デクに迷惑がかかるため、ショートはそれを避けているのだが。
そして、ショートがこうしてデクに情報を聞く理由こそ、ショートのここ数年の生きる目的と言っても良かった。
どうやらショートには、双子の兄がいるらしいのだ。双子と言っても、顔が同じでないタイプのものらしいが、それはどうでもよい。ただ、マギとしての力は生まれてすぐに診断できるため、その時点で兄は不完全とされたらしく、市井に捨てられたらしい。
兄の存在が確かなこと、そして兄は孤児院ではなくそこらへんに無造作に捨てられたことは、それを担当した者を脅して確認してある。ショートは、この兄に会ってみたかった。もしかしたら、ショートにとって唯一の存在となるかもしれない。なんといっても双子なのだから。
生きているかの保障などないし、生きていたとしてまともな人生か分からない。それでも、ショートは双子の兄がいるという事実を知ってからというもの、単調で孤独な生活の中で、兄を探すことが自分にとって自分が独自に行っていると自信をもって言えるただ一つのことだった。
だから今日も今日とて成果はないだろうと踏んでいた。しかし。
「殿下、それが…」
「…?どうした」
「殿下と、そして王妃様によく似た、同い年くらいの商人の少年を見つけたんです」
「…なに?」
デクが言うには、薬と物々交換で水を取引しようと王都の商人を回っていたのだが、ちょうど周辺諸国でも有名な水のマギである商人が来ていて、その人物を尋ねたところ、顔だちが似ていたのだという。
髪は白髪に赤い髪がひと房右側にあるらしい。右目に眼帯をしており、マギとしての力は一目で強力と分かるものだった。
「でも王家の力は炎。母上の力は氷だ」
水は似て非なる力だ。マギの力は非常に固定されているのである。
「いえ、僕が話を聞いた限りだと、水だけでなく、蒸気や氷も出せるそうです。炎と水を操ることも可能だと」
「複合型?」
「そうです」
複合型のマギは非常に珍しく、国内で見つかろうものならすぐに王城に招聘される。そして、ショートが王家で初めて複合型として生まれた。双子の兄は複合型ながら、それが不完全だったがために捨てられた。ショートははっきりと二つの力を有している。
「氷の力を炎の力によって変化させて、水や蒸気に変換しているとしたらどうでしょう」
「辻褄は合うな」
マギについて個人的な趣味から調べているデクは、マギのことをとてもよく知っている。その見立ては早々外れない。
「王家であれば必ず青い瞳を有しておられるはずです。一度お会いする価値はあるかもしれません」
「あぁ、そうだな。場所を教えてくれ。逃げられると困るからな。俺が直接、会いに行く」