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運命を変える出会いというものを、ショートは信じていなかった。あの日までは。

その出会いから実に1年が経過し、ショートはたった一人の存在がこれほどまでに生活を変えるものかと信じられないような気持ちだ。
今まで気にも留めなかった王城の庭園に咲く誇る花々や、木々に止まる鳥たち、水路にきらめく光や廊下に差し込む窓枠の影の芸術的な様子など、日常のあらゆるものが違って見えるほどだ。

唯一の存在だと、ショートの全身が叫ぶ。

そんな人に出会えた、いや、再会できた喜びは、ショートにとって言葉で表現しようのないものだった。



***



デクに教えられた王都の一角に、フードを深く被ったコート姿で向かうと、そこは質素な古い住居だった。その家には大きな荷台と立派な馬がおり、行商人だとすぐに分かった。

そして家から出て来た少年に声をかけ、彼が振り返った瞬間、2人は互いに分かったはずだ。互いが、本当はこの世で最も近しい存在だということが。
開口一番、ショートはこう言った。


「眼帯を外してくれねぇか」


それは確信だった。彼はそっと眼帯を外し、目をゆっくりと不慣れそうに開いた。
そこから覗く青い瞳は、まさしく自分のそれと同じだった。これはもう、疑う必要がない。ショートはフードを取って、彼のことを強く抱きしめた。
「会いたかった」、その言葉は、そのときは意味が伝わっていなかったようだが、それは彼を王城に連れて行ってすぐに理解してくれた。


名前はヒスイ、名前すらつけられずに王城を追い出された赤子の名だった。そして、ショートがずっと追い求めていた人物の名前だった。



それ以来、ショートはヒスイと何時間も話した。ヒスイは思っていたほど驚いていなかったが、青い瞳と王家のことを知っていたため、本当にそうだったのかという軽い驚きしかなかったらしい。
ショートの境遇を聞いたヒスイは複雑そうな表情をして、そして、ショートの頭をそっと撫でた。


「大変だったね。つらかったでしょ。ごめんね、俺が最初から強ければ…」


その言葉は、純粋なヒスイの優しさの現れであり、その温もりは、ショートがずっと求めていた心の温かさだった。
思わず、瞳からボロボロと水滴をこぼしてしまい、ヒスイが苦笑して、その涙を操って空気中に舞わせていた。「不敬かな」といたずらっぽく笑ったので、そこで初めて、ショートはきちんと表情筋を動かして笑みを浮かべることができたのだ。


もちろん、ショートが勝手にヒスイを王城に連れ込んだことは王家も王城も上から下まで動揺させた。父は当然怒ったが、ショートはヒスイの力を見せつけ、ヒスイの実力でもって王城にいさせることに、そして王家に名前を連ねることを認めさせたのである。
どうやらヒスイは王都の、この国の、そして周辺国の民衆の間で広く知られた行商人だったらしく、貧しく病んだ人には無償で綺麗な水をマギの力でもって提供していたこともあって、また誠実な商売姿勢もあって、それなりに人気だった。そのヒスイは実は王家の人間で、今回王家に復帰したというニュースは瞬く間に国際的に広がった。

王子となってからもヒスイは市民に水の提供を、それも王家に戻ってからは完全に無償化したので、父とショートと二代揃って不人気だった王家の人気を高めた。父や王侯貴族たちは王子としてのヒスイの素質を徐々に認めていき、今はまるで昔からずっといたかのように王城に馴染んでいる。


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