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交代でシャワーを浴びたあと、灯水が爆豪の部屋に戻ってくると、当然だが自室であるため、ベッドの上でくつろいだように横になってスマホをいじる姿があった。
「シャワーと服ありがと」
「あぁ…」
「……」
「………」
気まずい。
前の山登りもそうだったが、そもそも二人は普段から口数が多いわけではない。いつも一緒にいるような関係でもないため、こういうときどうすればいいのか分からない。
今までは、中学のときであればどんな相手とも話せていたのに、急に爆豪を相手にするとどうすればいいのか分からなくなる。それほどに、灯水は自然体でいるのかもしれない。
とは言っても微妙な空気なのは変わらないため、灯水は強引に口を開く。
「…ま、まぁ、もとはといえば爆豪君のせいだけどね」
「はあ?てめぇがちんたら歩いてっからだろうが」
きちんと罵倒が返ってきたことに安心し、灯水はベッドにもたれるようにカーペットに座る。罵倒に安心するというのもおかしな話だが。
「いやいや、傘借りてる側は配慮するべきでしょ」
「んで俺がてめぇに合わせんだよ」
「うーわ唯我独尊。脇から生まれたの?」
「カイバル峠から突き落としてぇやつランキング第1位だわ」
「せんせー、俺が1位になる」
「真似してんじゃねぇ!」
爆豪はついにキレたのか、ベッドから起き上がると灯水につかみかかってきた。体の向きを変えて応戦するも、高い位置から力と体重をかけられては支えきれない。
ぐぐ、と爆豪の両腕を灯水も同じく両腕で掴んで、手押し相撲のようになる。
「ちょっ、重いから!」
「ハッ、その貧相な腕で支えてみろや」
「断る!」
そこで灯水は、爆豪の腕を支える自身の腕から力を抜いた。その途端、爆豪もバランスを崩し、こちらに倒れこむ。
灯水は、爆豪は自分でバランスを保つと思っていた。しかし意外にも爆豪はそのまま「うおっ」と言ってこちらに倒れてくる。
そして、爆豪はベッドから落ちて灯水を押し倒すように床に倒れこんだ。
「うわっ!」
「っ、クソ、」
「二人とも〜クッキー食べ……あら、」
と、そこへ、光己が扉を開けて中に入ってくる。
ベッドのそばで、爆豪に押し倒される灯水、それを見てにやりとする光己。
「勝己あんた、またそんな優良物件に手ぇ出して…ちゃんと誠実にお付き合いしなさいよ」
「ちっげーわクソババア!!!」
「あらあら。そんなしっかりと手握っておいて?」
光己が指摘する通り、先ほどまでつかみ合っていたため、爆豪と灯水の両手はそれぞれ恋人つなぎのようにしっかりと指が絡まっていた。
それに気づくと、灯水も爆豪も、顔に熱が集まって赤くなる。
「や、これは違くてですね…!」
「いいのいいの、あたし気にしないから。あ、そうだ、灯水君もう今日は泊まっていきなさい、遅いから」
「え、この流れで…?」
光己は一通りからかって満足したのか、そんなことを言い出した。爆豪はさっさと灯水の上からどいて床にあぐらをかく。
「どこで寝んだよ」
「あんたの隣」
「はぁ!?」
「だって来客用の布団全部クリーニングに出しちゃってるんだもん。でもこんな時間によその子帰らせるわけにもいかないし、私これからご近所さんとお出かけだし」
「床で寝かせろ!」
「あんたがそうしなさい。じゃあ灯水君、ちょっと狭いかもしれないけどごめんね」
怒涛のように光己は自分の言い分を通すと、爆豪のことを聞かずにとっとと階下に降りて行った。残された爆豪は怒りで震えている。
「…次からは傘、忘れないようにね」
「……言われんでもそうするわ………」