仁義なきツートップ
爆豪のせいで味覚がおかしくなったのではないかと思った昼休みを終え、ヒーロー基礎学をこなし、放課後がやって来た。
職場体験明けの救助レースでは散々だったが、爆豪と一緒にいたことで灯水のメンタルも持ち直し、今日は調子が良かった。ただ、コスチュームから着替えて制服に戻りカーディガンを着ると、さすがにそろそろ匂いが取れてきてしまっているのが感じられた。やはりいったん返しておくべきか。
そんなことを考えていればあっという間に終業のチャイムが鳴り、クラスは荷物を片付けるざわつきに満ちる。
爆豪はすぐにスクールバッグをリュックのように引っかけて立ち上がっており、灯水も急いでスクールバッグを肩にかける。
「爆豪君、」
「あ?」
「柄わっる…一緒に帰ろ」
「はぁ?また一緒かよ、ふざけんな」
「いーじゃん別に、」
「減るっつってんだろ」
先回りされてしまった。完全に「減るもんじゃない」というお決まりのセリフは封じられてしまったようだ。正直その通りだと思う。
「つかお前、俺のこと好きすぎだろ」
ハッと鼻で笑うように言った爆豪。もちろん特に意味のない言葉なのだろうが、「好き」という言葉が思考の範疇になかった灯水からすれば軽い衝撃だった。
友人として、というニュアンスなのは当たり前なのだが、いかんせん、しっくり来すぎてしまっているのだ。
好きか、と言われれば、好きだと思う。こんなにもそばにいて居心地がいいのは、焦凍以外では初めてだった。そしてこんなにも、もっとそばにいたいと思うのも、初めてだった。
なんて答えよう、と思った矢先、二人に声がかけられた。正確には灯水に対して。
「灯水、帰ろう」
「焦凍…」
そばに来たのはショルダーバッグをかけた焦凍だ。確かに、昨日まではほぼ毎日一緒に帰っていた。帰る場所が一緒なのだから当たり前だが。
一緒に帰る気分になれなかったあの雨の日、爆豪とずぶ濡れになりながら山を下って、爆豪の家に泊まった。
「あー、今日は爆豪君と帰るから先行っててよ。緑谷君とかとさ」
「…お前ら、最近やたら仲良くねえか?」
すると焦凍は、すっと爆豪にも目を向けた。断っておきながら先に行くことをしなかった爆豪は、正面からそれを受け止める。
「それ私も気になってた!」
「俺も思ったんだよ!」
さらに、葉隠や切島も同意しながら寄ってきた。言葉にしないものの緑谷も頷いているし、瀬呂や上鳴も「昼も一緒にいたもんな〜」と加わってくる。
「仲良きことは美しきなりだ!爆豪君にも人の心があったのだな!」
「喧嘩売っとんのかクソ眼鏡」
緑谷のところへ来ていた飯田の天然失礼な言葉に爆豪は噛みつくが、切島たちも深く頷いているあたり、言い逃れできないだろう。
焦凍はそんな周りは気にせず、爆豪の方を向く。
「ちょっと前にも泊まりで出掛けてただろ。この前も泊まってたしよ。今日は昼も放課後も一緒って、さすがに気になる」
「おめーに関係ねえだろ」
そんな焦凍に爆豪はすげなく返した。いつも通りだった焦凍は、その言葉にむっと表情を変えた。珍しいその変化は、間違いなく灯水に関わることだからに他ならない。
「関係ある。俺たちは双子で、俺にとって1番大切な存在だ。それがこんな粗暴なやつといたら心配になんだろ」
「眼鏡も半分野郎もクソデクもむかつくなァ…!うぜえの三段アイスかよカス」
「抹茶とイチゴとバニラと小豆?美味しそう」
この三人の三段アイスなら美味しそうだと思った通りに言うと爆豪は無言でデコピンを仕掛けてきた。額に青筋が浮いている。
「いっだ…!」
「おいてめぇ…!」
それにキレたのは焦凍だ。思い切り睨み付けるが、爆豪は意にも介さない。