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オールマイトがこちらに殺気を向けた瞬間、緑谷は背を向け、爆豪は飛び掛かった。まったくの別行動で、連携などあったものではない。これでは灯水も範囲攻撃に出られない。
「
閃光弾!!」
カッと眩い光が目くらましとなり瓦礫を照らす。その隙に爆豪はオールマイトに飛び掛かるが、オールマイトは爆豪の頭を鷲掴んだ。
しかし爆豪はすぐにそのままオールマイトの顔目掛けて連続爆破を仕掛けた。「いたたたた」とオールマイトが言っているものの、大して効いた様子はない。
それどころか、オールマイトは掴んでいた爆豪の頭を、思い切りむき出しの地面に叩きつけた。意識を飛ばしかねない。
「爆豪くんッ!!」
駆け寄ろうとしたが、爆豪はすぐに起き上がる。そのときにはすでにオールマイトは緑谷のところに瞬間移動していた。
「君も君だ緑谷少年。チームを置いて逃げるのかい?」
間合いに入られた緑谷は、咄嗟にエネルギーを体に纏って空中に飛び上がる。
同時に、起き上がった爆豪が爆破で飛び出していた。
「ばか、」
「そいつは良くない」
案の定、2人は空中で激突した。そもそも、オールマイト相手に身動きの効かない空中へ逃れるのは悪手だ。緑谷が、まったく冷静ではなかった。
地面に墜落する2人は、灯水からはオールマイトを挟んで向こう側にいる。合流はできない。それに、オールマイトは近接攻撃を目論む2人を排除し次第こちらをいつでも無効化できるよう、灯水にもビリビリと殺気を飛ばしている。2人が連携の取れていないめちゃくちゃな動きをするせいで攻撃に転じられないこともあった。
爆豪は起き上がると、またオールマイトに正面から向かっていく。
「だから!正面からぶつかって勝てるハズないだろ!?」
「喋んな。勝つんだよ……それが、ヒーローなんだから……」
「じゃあ尚更ここでの戦闘は…」
「離せ触ん、」
2人は口喧嘩に意識が向き、オールマイトから注意がそがれた。
「なにして、」と 灯水は呟きながら咄嗟に氷結を出そうしたが、それより先にオールマイトはガードレールを引き抜くと空中にジャンプした。
「とりあえず、逃げたい君にはこいつをプレゼントだ!」
オールマイトは緑谷に向かって落下すると、ガードレールで緑谷を地面に拘束してしまった。僅かにでも逸れれば貫通していただろう。
さらに、オールマイトは近くにいた爆豪の鳩尾に思い切り拳を叩き込んだ。吹き飛ばされた爆豪は、数メートル離れたところに落下してから、胃の中のものを吐き出した。
「わかるよ…緑谷少年の急成長だろ?でもさ、レベル1とレベル50の力、成長速度が同じなハズないだろう!?」
オールマイトは爆豪の元へ歩きながら語る。先ほどから灯水に攻撃しないのは、灯水が2人に配慮して攻撃できないからだ。そうなるように、2人を通りの微妙な位置に固定化した。くそ、と灯水は歯痒く感じる。
小回りの利く近接攻撃ができないどころか火力に欠ける灯水は、打つ手がない。
「君だってまだいくらでも成長できるんだ!でもそれは力じゃない…」
「黙れよオールマイト…」
ゆらりと爆豪は立ち上がる。何度も吐いてふらふらとしている。三半規管も腹も言うことを聞かないのだろう。
「あのクソの力ぁ借りるくらいなら…負けた方がまだ……マシだ……!!」
「……そっか。後悔はないようにな」
負けた方がマシ。あれだけ勝つことに固執する爆豪が、まさかそんなことを言うとは。それだけ、緑谷のことが嫌いだとでも言うのだろうか。
そんな強く、人を嫌うことなどあるのだろうか。灯水ですら、父親の炎司をそれほどまで強く憎んでいないというのに。
その瞬間、緑谷が拘束から抜け出し、爆豪を思い切り殴り飛ばした。一瞬で移動したその速さに目を見張る。
「負けた方がマシだなんて……君が言うなよ……!!!」
緑谷はそう絞り出すように言うと、殴り飛ばした勢いのまま爆豪を抱えて路地裏に逃げていった。