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途端に、巨大な氷結が通りを包み込んだ。
氷結だけなら焦凍よりも強い灯水の個性によって、オールマイトは一瞬で氷の中に消える。
直後、爆発音とともに氷が砕け散る。すかさずそこを別の氷で埋める。
さらに、地中から次々に氷を上に向かって出現させた。土が混じって黒ずんだ氷の柱が、中にオールマイトを閉じ込めたまま立ち上っていく。
何度もオールマイトは破壊しようと衝撃波を放っているが、氷の柱の中はオールマイトに向かって上下左右に乱雑な氷結の動きをしているため、全方位に衝撃波を放っても柱が崩れる前に塞がる。
氷柱はみるみる大きくなっていき、やがて100メートルを超して150メートルにまで達する。
さすがにまずいと思ったのか、オールマイトは一際大きな攻撃を行った。柱は上部三分の一あたりで爆発し、オールマイトの両腕からの衝撃波だろう、東西方向に氷が砕け散った。
市街地に落下しないよう、柱から横向きに氷結を起こして破片をつなぎ止め、かつ、その横向きの柱を氷柱内部でオールマイトに向けてプレスするように突き刺した。
まるで、巨大な氷の十字架だ。
体を覆う霜を解かして、灯水は街に陰を落とす巨大な十字架を見上げる。
直後、オールマイトの爆破によって氷の十字架は粉々に砕け散った。その衝撃波の強さで完全に氷柱は砕け、落下しながら摩擦熱と真夏の暑さによって液体に変わり、雨のようになる。
それは日光によって虹を形成し、破壊された氷柱から虹を纏って平和の象徴が飛び出してきた。
あれは、灯水の墓標だ。空っぽだと勘違いしていた、少し前までの自分の墓だ。
それを、オールマイトが破壊したのだ。
「……ありがとう、オールマイト」
小声で言うと、消えかかる虹をバックに接近してくるオールマイトとは別の気配に、少し大きめの声をかける。
「……遅い!いつまでくっちゃべってたわけ!?」
そう言って、灯水は辺りの水蒸気を一気に冷やした。瞬間的にこの区画の気温は大きく下がり、もやが現れて吐く息が白くなる。
そこへオールマイトが衝撃とともに着弾してきた直後、オールマイトの背後に路地裏から爆豪が現れた。
「どこぉ見てんだ!?」
「後ろだったか……!?」
「デク!!撃て!!!」
灯水が蒸気で飛び上がり、爆豪も離れた瞬間に、前から出て来た緑谷が爆豪の篭手を起動させた。
「ごめんなさいオールマイト!!」
緑谷は、篭手によって大爆発を起こした。あの篭手は爆豪のニトロを集積して着火する仕組みになっているそうだ。
爆破はさらに、灯水が冷やしていた空気を膨張させより大きな威力となって爆発する。体育祭での焦凍と緑谷の戦闘で起きたことと同じ現象だ。
爆発の衝撃で体制を崩しそうになりつつも、3人はゲートに向かって一気に急いだ。
「走れやアホ!!」
「あっ、うん!」
緑谷は地面を駆けて、灯水と爆豪は空中を飛ぶ。
未だに背後から風を受けるのを感じたのか、緑谷は「すごいや……」と呟く。
「灯水君、咄嗟によく熱膨張なんて思いついたね」
「さすがに2人が協力して、範囲攻撃によって距離を離して逃げる方法を選ぶかなって思って。そうじゃなくても、とりあえず冷やとしけば爆豪君のフォローになる」
「チッ、んなクソナードの力借りることになったのもてめぇが戦わねえからだメッシュ野郎!」
「戦ったじゃん!2人が俺のことは置いてくから!」
「ご、ごめん」
置いていった緑谷が謝る。
「あの氷の柱で影ができて、初めてかっちゃんと僕は灯水君置いてったことに気付いて…」
「正直かよ」
軽く笑うと、緑谷は少し驚いたようにしていた。爆豪も軽く目を見張っている。
「灯水君、なんかいつもと…」
「おい!それより、次もし追いつかれたら俺の篭手でぶっ飛ばす!」