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「私有地につき個性の使用は自由だよ!今から3時間、自分の足で施設までおいでませ!この魔獣の森を抜けて!」


頭上から降ってくる声が示す「魔獣」とは何なのか、答えはすぐに分かった。
一同の前に、まるでティラノサウルスのような巨大な獣が現れたのだ。

口田の個性が効かないことから、ピクシーボブの個性で操作された土だと分かる。生き物ではないのなら、個性を使うことになんの気後れもなかった。

灯水はすぐに蒸気で飛び出し獣を目指す。同時に、爆豪や緑谷、飯田、焦凍もそれぞれ動き出したのが見える。各自の攻撃パターンを考えて、灯水は飛びながら指を拳銃のようにして前に出し、圧力を籠める。

そしてそれを勢いよく放つと、強力な文字通りの水鉄砲が魔獣に向かい、その首元に穴を開けた。そこを通り抜けて反対側に出ると、爆豪たちもそれぞれ魔獣を攻撃して抜けてきていた。

3時間というマンダレイの言葉と、上で見た施設への距離を考えると、蒸気で飛び続けるわけにはいかない。灯水は着地して足で走り出した。同じように考えたのか、爆豪も隣に降りてきて走り始めた。


「爆豪君、あんま個性使い過ぎんのも後続のボランティアになんのも嫌じゃん?」

「…なんだよ」

「ちょっと合わせ技やってみようよ」


先日の期末試験での実技において、意図せずして試した技だ。爆豪もピンとくるものがあったらしい、「聞かせろ」と柄も悪く言ってくる。


「樽爆弾ってあるじゃん、樽に釘とか刃物を詰めて爆発させて、周囲にそれを飛散させることで不特定多数を殺傷するやつ」


かつてレバノン内戦などで使用された、民兵などがよく行う簡易かつ残虐なテロ攻撃である。即死せず、体内に釘などが残りじわじわと死に至ることが多い。


「爆豪君の爆発は、ある程度の指向性がある。俺の雨氷で尖ったつららみたいなのを出して、爆豪君の爆発で飛散させんの」

「お前…見かけによらずエグいこと考えんだな」

「期末のときに思い付いただけだから!」


引いたようにする爆豪にちょっと怒ってから、ちょうど目の前に別の魔獣が出現するのをみとめる。
10メートルほど離れたところで二人は立ち止まると、灯水は右手を薙ぎ払うようにして動かして個性を発動し、純度が高く折れることのない雨氷でつららを生み出す。それが落下する前に、爆豪が灯水の前に瞬時に出て来て爆発を起こした。
つららは前方へ向かう爆風に乗って目にもとまらぬ速さで飛び、魔獣を貫いて引きちぎり、地面に倒した。

爆豪が前に出て庇ってくれたことで、爆風も熱もほぼ感じなかった。
この合わせ技によって、灯水は大規模な技を出す必要がなくなり、爆豪も爆破を弱くすることができる。


「いけるもんだね」

「あたりめーだろ」

「才能マンだし?」

「お前と俺だからだろ」


爆豪の言葉に一瞬キョトンとしてから、灯水は「なっ…!」と赤面する。爆豪はニヤリとしてから、さっさと走り出した。

あとに続きつつ、爆豪が本気でああ言ったのだと分かり、灯水は冷水を顔に打ち付ける。


「つめッた…あー、もー…!」


不意打ちでこんなことを言われては本当に心臓が保たない。しかし、何よりも、こうやってダイレクトに認めてもらえていることが、今までの家庭ではほとんどなかったため、あまりに嬉しかった。


「ほんとずるいじゃん……」


惚れた方が負けとはよく言ったものだ。


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