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「爆豪君!!」


灯水が叫ぶと同時に、爆豪はジャンプして灯水の隣まで後退する。その瞬間、フローリングの隙間を縫った水を介して一瞬にして部屋全体で氷結が発生した。全員を腰まで拘束し、マグネや女子高生の悲鳴が上がる。


「な、んでこんな一瞬で…!?」

「いたたた!なにすんのよ!!」


驚くコンプレスと騒ぐマグネ。黒霧は目元まで氷結しているためこちらが見えない。ただそれもわずかな間だけだし、荼毘はすでに炎を出そうとしていた。また、女子高生もナイフを飛ばそうとしている。


「灯水!」

「分かってる!」


爆豪が名前を叫ぶ。灯水も叫び返すと、一気に部屋の温度を下げた。吐く息が白くなった途端に、爆豪が爆破を放った。それと同時に灯水は二人の正面に雨氷の壁を構成する。
冷えた部屋での爆発は空気膨張によって大きなものとなり、敵たちの悲鳴とともに天井が吹き飛んだ。その爆音が聞こえる中、壁によって爆風を免れた二人はすぐに逃げだそうと後ろの扉へ向かう。

すると、突然二人の正面に上から人が着地した。敵かと身構えたが、「伏せろ!」と言われて二人とも反射で姿勢を低くする。その上を、木の幹のようなものが飛び出し、爆風で氷結が剥がれた敵連合たちを拘束した。


「先手必縛、ウルシ鎖牢!!」

「シンリンカムイ…!」


それは新人ヒーローのシンリンカムイだった。全員を拘束した直後、荼毘がそれを燃やそうとしたが、そこにさらに人影が飛び出す。


「んなもん…、っ!?」

「逸んなよ、おとなしくしておいた方が身のためだぜ」


そう言って荼毘を気絶させたのはステインの事件で出会ったグラントリノだった。


「もう逃げられんぞ敵連合…なぜって?我々が来た!」


そして最後に、穴の開いた天井から降り立ったのは、絶対的存在。原色が夜空に映える、オールマイトだった。

一気にヒーローたちが突撃したことに驚いていると、扉からしゅるりと音を立てて別のヒーローが現れる。エッジショットだ。


「攻勢時こそ守りが疎かになるものだ」


その淡々とした言葉から、灯水はあの記者会見がフェイントだった気づく。すでに彼らは、この場所の特定にこぎつけており、完全に組織化された上で突入してきたようだ。一応、出入りが自由になっているのは天井だけのため、エッジショットは扉の鍵を開けて扉を開放する。開かれた外からは下に通りが見えて、警察で埋め尽くされていた。その中には、炎を上げるエンデヴァーの姿まであった。


「塚内ィ!なぜあのメリケン男が突入で俺が包囲なんだ!中にいるのは私の息子だぞ!!それにあの爆発はなんだ!計画になかっただろうが!」

「…、父さん…」


炎司が灯水をはっきりと息子と呼んだのは、これが初めてだった。これまで決して、灯水のことを顧みず、いないものとして扱っていたにもかかわらずだ。

当のメリケン男ことオールマイトは、爆豪と灯水を見て頷く。


「怖かったろうに、よく耐えた!…ごめんな、もう大丈夫だ少年たちよ」

「こ…怖くねぇよ余裕だくそ!!」

「すみません、余計なことしました」


爆発はともすれば突入を遅らせていたかもしれない。灯水は意味がないと分かっていながらも謝ったが、オールマイトは変わらずに頭を撫でてくる。


「いや、さすが灯水少年だ。あの規模の爆発に氷結の跡、二人で力を合わせていたんだな。期末の時よりもすごいじゃないか」


そういえば、オールマイトに対抗するべく二人は力を合わせて戦っていた。あの期末が遙か遠いことのようだった。あのあと、合宿前の魔獣の森でも共闘していた。
一方で、死柄木はオールマイトを睨み付けてから、黒霧に叫ぶ。


「仕方ない…黒霧!持ってこれるだけ持ってこい!!」

「…すみません死柄木弔…所定の位置にあるはずの脳無が、ない…!」


どうやら、脳無は量産されていたらしい。その事実のおぞましさに思わず顔をしかめてしまう。しかしオールマイトはそれを聞いて笑みを深めた。


「敵連合よ、君らは舐めすぎた…少年たちの魂を、警察のたゆまぬ捜査を…そして、我々の怒りを!!」


恐らく、この作戦は別の場所にある脳無の格納庫でも行われていたのだろう。そちらの作戦の成功も知って、オールマイトは計画通りにことを進めている警察やヒーローたちの力を称えていた。


「ここで終わりだ、死柄木弔!」

「終わりだと…?ふざけるな…始まったばかりだ…」


死柄木はぶつぶつと続けるが、黒霧はエッジショットによって沈黙させられ、グラントリノが全員の実名を呼ぶ。犯罪者として、すでに罪状も含め令状が出ているのだろう。名前が分からなかった女子高生はトガというらしい。これで全員を逮捕して終わり、それがあるべき姿のはずだった。


「ふざけるな…失せろ…消えろ…」

「ヤツは今どこにいる!!死柄木!!!」

「お前が!嫌いだ!!!」


そう死柄木が憎悪にまみれた声で叫んだ瞬間、その両側から突如として黒い液体が出てきた。それが、悪夢の本当の始まりだった。


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