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シオンと鋭児郎の人種的な差は仕方ないものだ。しかし、入学を前に焦っている鋭児郎に、少し本気でやりすぎたかもしれない、とシオンは思った。
入学式の日。帰宅した鋭児郎は気落ちしたような表情をしてすぐに「トレーニングしようぜ」と言ってきたのだ。これは良くないと思ったシオンは、まず話を聞くことにする。この状態でやったら怪我をするに決まっているからだ。
「鋭児郎、なんかあったでしょ」
「え、俺そんな分かりやすいか?」
「自分ですぐ顔に出るって言った」
「…確かに」
シオンの個性を初めて話した、かなり前の出来事だ。顔に出やすいから今更内心を読み取る個性であっても変わらないと言っていた。
鋭児郎は観念したのか、自室に戻るなり、制服を適当に着替えてベッドに腰かけて話し始めた。
シオンはその前の床に座って聞く。
「…今日さ、個性把握テストってのやったんだ」
「入学式は?」
「ヒーローになるならそんなんやってる暇ねぇって」
「雄英こわ…」
最初からスパルタな学校に戦慄する。ちなみにシオンが通うインターナショナルスクールは特に何事もなく始まった。英語ばかりなので日本が下手になりそうだ。
「体力テストってのがあってさ、ハンドボール投げとか、走り幅跳びとか、そういう種目を個性使ってやることでそれぞれの個性を把握するっつーことだったんだけどな」
「…それ個性によって全然結果違うよね」
「そうなんだよ!クラス全員分をランキングにして発表までしてくれて、俺は20人中8位だった」
「上の方じゃん」
20人クラスというのは日本にしては少ない。しかも、ヒーロー科としての最高学府である。そんな場所で上の半分にいるというのはすごいと思った。だが鋭児郎は浮かない顔をしている。
「下と比べるならな。でも、上のヤツらがすごすぎたんだ」
体内に影の怪物のようなものを宿す生徒や、腕を複製してそこに体の一部を再現する生徒、さらに手から爆破を起こせる生徒に体の半分で凍らせ半分で燃やす者や体から生物以外なんでも生成できる個性の者などもいるのだという。
話を聞くからにとんでもない逸材ぞろいだ。
「…俺の個性、硬化は、別に弱いとも思ってねぇけど、派手じゃねぇ。汎用性だって高くねぇ」
「…まぁ、上位の人たちと比べるならそうかもしれないけど」
「爆破も半冷半燃も、創造も黒影も。派手で範囲攻撃できるし汎用性も高い。すげぇヒーローに向いてんなって思った」
どうやら鋭児郎は、上の生徒たちとの差を感じて少し落ち込んでいるらしい。自分を卑下しているというより、ただただ、圧倒的強さに気圧されたのだろう。
「せめて体はって思っても、フィジカル専門の個性もいたし、なんならシオンにだって勝てねぇ」
「…鋭児郎……」
鋭児郎がこんなに弱気になっているのは、もしかしたらシオンが訓練で本気でやりすぎたからかもしれない。もう少し基本的な、2人の差が明確になりすぎない内容の方が良かったのかもしれなかった。
だが、鋭児郎が8位だったのも、恐らく個性を使えない種目での他の生徒との差が大きかったからだ。何も鋭児郎だけが個性を生かせなったわけではない、なんでもできる上位は別として、きっと素の身体能力によって上位に行けた部分があったに違いない。