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それから数日、シオンは義母に連れられて、とある家を訪れていた。
表札には「送崎」と書かれていた。なんと、シオンの母方の親戚にあたる人物らしい。パスポートの情報で、NGOが親戚を探していてくれていたらしく、その中で見つけることができたのがこの人物だということだ。
すでに切島家に籍を置いているシオンは、別に今回この送崎という人物の世話になるつもりでもないのだが、この送崎という人物の方からただ単に会ってみたいという連絡が義母にあった。
そうしてシオンは遠く離れた町まで来ている。
インターホンを押すと、中から心得たように女性が出てきた。赤みがかったボブカットの髪型で、身長が高めの女性だ。
「こんにちは、初めまして!切島さんですね」
「こちらこそどうも初めまして、切島です」
「シオン君こんにちは、私は送崎信乃。ヒーローをしていて、マンダレイという名前で活動しています。よろしくね」
ヒーロー・マンダレイ。ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツというヒーロー4人組の1人だということは事前に義母から聞いていた。
送崎に中に通されると、リビングのソファーには少年が1人座っていた。その横に送崎が立ち、向かいのソファーにシオンと義母を座らせる。
ローテーブルには紅茶のセットが置かれている。
「改めて初めまして。送崎信乃と申します。こちらは従甥の出水洸汰。母方の親戚にあたります」
隣にいる少年は洸汰というらしく、送崎の母方のいとこの息子だという。
シオンは送崎から見ると父方のいとこの息子なので、関係性は近い。
「シオン君は私から見ると父方のいとこの子供なの。あなたのお母さんは父の姉よ」
「…近いような遠いような、って感じですね」
「そうそう」
6親等は離れている。ちなみに、シオンの名前はシオン・S・ギマゼトディノワで、このミドルネームのSが送崎を意味する。ギマゼトディノワは父の苗字で、国際結婚の場合母方の苗字をミドルネームとして残すことができるという法律があった。
「送崎さんの個性、あなたと似てるのよ」
義母は事前の情報が多いようなので、まずはその話から入った。個性の話は気軽な挨拶の一部である。
「個性、ですか」
「そう、私の個性はテレパス。自分の内心の言葉を他人に伝えることができるの」
「えっ、本当に似てますね」
シオンは自分の個性、エンパスを説明することにした。まだわかっていないことも多く、今日はそのことについて話を聞いてみたいというのもあってここへ来たのだ。
「私と違って双方向的なのね。その分、伝えられる距離や人数、発動条件に制約が多いようだけど、とても有用だわ」
送崎の個性、テレパスは自分の言葉を無制限に他人に伝えられる。距離の制約こそあれ、かなり広範囲の不特定多数に伝達できるという。
伝達する相手に対するモーションなどは特に必要がない。しかしそうした利点の一方で、他人の言葉を自分に伝えることができなかった。また、感情や記憶なども不可能だ。
シオンの場合、相手の言葉や感情を読み取り、自分のものを相手に伝えることができる。しかし、自分のことを伝えるのに相手に触れる必要がある他、距離や人数に限りがある。
テレパスより双方向的で、かつ深く狭くなったといえるだろう。
「感情に関する個性は、概して感情が強いほど効果が強くなるし、作用する相手との心の距離も影響するわ。触れていなくても双方向的にコミュニケーションをとれるのは、かなり仲が良くないと難しいわね」
「…なるほど」
その言葉に浮かぶのは鋭児郎のことだ。そういえば、個性を使うときはよく抱き合っているし、最近は触れていなくても伝えられる事柄が多く、かつ時間も長くなってきた。
それだけ鋭児郎との仲が深まっているのだと思うと、それが目に見えるのは嬉しい。自然にハグすることが多い2人だが、それはもしかしたら本能的に互いの感情などをより伝えようとした結果なのかもしれない。