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そして体育祭当日。
シオンは家で義母とともに、テレビの中継をリビングで見つめていた。やはり、一介の高校を大半の局が放映するなど普通では考えられないが、全国が異様な盛り上がりを見せていた。

巨大なスタジアムはなんと学年に一つ割り当てられており、人で埋め尽くされている。特に、今年は襲撃を受けたA組への期待値が高いということで、例年よりも1年生の中継が盛り上がっているようだ。

やがて、入場が終わるとすぐに第一種目の案内が始まる。A組の中にいる赤い髪はすぐに分かった。
大和撫子の国のはずなのにとんでもない恰好の教師が進行していく中、最初の種目は障害物競走と表示される。これは生徒たちには事前に知らされていない。


「案外普通なんですね」

「いいえ、雄英だもの、普通のものじゃないわ」


バトルロワイアルでもするのかと思っていたため、普通の種目が出て来たことに驚く。しかし例年見ている義母いわく、これは名前だけで基本的には雄英らしい常軌を逸したものだという。

生徒たちは一斉にスタートラインにつき、そしてブザーとともに走り出す。
直後、先頭は突如として氷結し、多くの生徒の動きが止められた。すごい個性だな、と思っていれば、その紅白頭の生徒は、最初の障害物にたどり着く。


「…障害物?これが?」

「ええ、これが雄英の障害物よ」


そこにいたのは、巨大なロボット軍団。最も大きなものは先進国の国防兵器で、かつて戦乱の中でシオンも見たことがある。5分で人口10万の都市を焦土にしていた。型はロシア製なので、日本のものとは少し違うが、とても高校生の障害物競走で使うようなものではない。
ただ、意外と脆いので、ランチャー系の攻撃でもそれなりのダメージを与えらえた記憶がある。

実際、生徒たちは次々と攻略していき、一度ロボットの下敷きになった鋭児郎も硬化で突き抜けていた。あれくらいなら大丈夫と思っていたシオンだが、やはり下敷きになるのは心臓に良くない。
あの紅白頭許すまじ。

その後の障害物は特につつがなく鋭児郎も切り抜けていき、結果9位でのゴールとなった。あれだけの数の生徒がいるのだ、非常に上位である。


間髪入れず、第二種目、騎馬戦の時間になる。ポイント制のバトルロワイアル式で、鋭児郎は障害物競走でも目立っていた爆破の個性の生徒と組んでいた。優秀な生徒なようで、咄嗟の判断力には舌を巻く。さすが、選手宣誓をやるだけの成績を持つ生徒だ。とんでもない選手宣誓だったが。

鋭児郎はその生徒とともに、無事に本戦へ勝ち進むことに決まった。


「すごい!すごいじゃない鋭児郎!ねぇ!」

「すごいですね、ほんと。良かった」


義母も興奮気味だ。息子がこんな大規模な大会で目立っているのだから当然だろう。


長い休憩時間の後迎えた本戦。
トーナメント式の個人戦で、これは体育祭の醍醐味でもあるそうだ。鋭児郎は第1戦、個性が非常に似ている金属系の個性の生徒と当たった。個性の力も被っているために、互角の戦い方をしている。
まるでボクシングの試合を見ているような殴り合いに、義母もハラハラとしていた。シオンが伝授した軍隊式の戦い方はきちんと生かせていて、ただの殴り合いではなく計算高い攻撃モーションができていた。

結果、鋭児郎は無事に勝利し、ベスト8に勝ち進んだ。

続いて第2回戦、鋭児郎の相手はあの爆破の生徒だった。鋭児郎が言っていた、遠距離攻撃が可能な相手にも立ち回る、というシチュエーションである。
最初は教えた通り、個性による防御を兼ねた攻撃によって相手に接近し、その距離を維持、攻撃を重ねていたが、爆破の生徒の方が少し上手だった。

先に鋭児郎の個性の限界が来てしまい、爆破を受け止めきれなくなっていった。
苦し気な顔が見えて、思わず拳を握りしめる。


(頑張れ、頑張れ…!)


この言葉が鋭児郎に届けばいい、と思いながら、内心で応援する。しかし、大きな爆破攻撃が鋭児郎を直撃した。


「やだ、もろに食らってるじゃない…!」

「…火傷に裂傷もあるかもしれないです」


傷の程度は決して軽くない。それだけ爆破の生徒も警戒しているのだろう。しかし、鋭児郎はあと一歩及ばなかった。爆破野郎許すまじ。
結果、爆破の生徒が勝利し、鋭児郎は倒れた。ベスト8という結果は、全体の中では輝かしいし、日本にその名を知らしめただろう。だが本人にとっては、常に上を目指す鋭児郎だからこそ、きっと悔しさが滲んでいるはずだ。


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