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ヒーロー・フォースカインドの事務所から離れた市街地で、鋭児郎は鉄哲ととともにヒーローとしての奉仕活動とは何たるやと教わっていた。任侠ヒーローというよく分からない肩書きのフォースカインドだが、その漢気というか、軸の通った考え方は鋭児郎の憧れを抱かせるには十分だった。

公園の清掃をしながらフォースカインドの話に大きな声で返事をしていると、突然、頭の中に声が響いてきた。
体育祭のときに感じた、シオンの声だ。爆豪との戦闘中に聞こえて来たものだが、なぜ今、とつい鋭児郎は屈んでいた腰を上げて耳を澄ませる。正確には意識を向けるだけだが、鋭児郎は切羽詰まったシオンの声に冷水を打たれたようになった。


『救けて、鋭児郎ッ!!』

「シオン…?」

「おい、何してる」


フォースカインドはすぐにこちらに気づき、鉄哲は集中していた鋭児郎のそんな態度に首を傾げる。


「おい、切島どうした?」

「…シオンの、救けを求める声がする…」

「あ?シオン?」


鉄哲がさらに疑問の色を濃くすると、鋭児郎はすぐにフォースカインドの正面に勢いよく駆けつけ、姿勢を正す。


「フォースカインドさん!」

「なんだ」

「救けを…救けて欲しいってヤツがいるんです!!あの、時間ねぇから、向かいながら話すんでもいいっすか!!」

「お、おい切島、いきなり何言ってんだ…」


脈絡もなく突飛なことを言い出す鋭児郎に、鉄哲はいよいよ諫めるように声をかけた。何も聞こえていない鉄哲には鋭児郎の言っていることが何も理解できなかった。
しかしフォースカインドは、じっと鋭児郎を見つめたあと、くい、と顎を公園の入り口に向けた。


「乗れ、聞いてやる。お前が不真面目なことを言うヤツではないと分かっているからな」

「っ、ありがとうございます!!!」

「マジかよ…!」


フォースカインドが黒い乗用車に乗り込むと、鋭児郎は助手席に、鉄哲は後部座席に乗り込んだ。すぐに車は動き出し、鋭児郎はまず「千葉方面へお願いします!」と方向を告げた。

幹線道路に向かって進み始めた車内、「で、」とフォースカインドが鋭児郎に促すと、すぐに鋭児郎も事情を話し始めた。


「俺の家の…その、家族が、エンパスって個性持ってるんす。自分の言葉、感情、記憶まで相手に伝えて、同じく相手のそれを自分に受け取ることができる個性です」

「聞こえたというのはその個性によるものだな」

「そういうことです!」


さすが、冷静な思考で近接戦を行うことでのし上がって来たヒーローなだけあり、すぐに鋭児郎の言わんとすることを掴んだ。鉄哲は少し理解に時間を要しているようだった。


「しかし、ここから千葉までそれなりにある。そんな遠距離でも通じるのか」

「この前の体育祭で、千葉の家にいたそいつから応援の言葉が聞こえました。千葉から静岡までなら届くっぽいです。ただ、親密な相手に限りますけど…」

「…なるほど。そして、聞こえて来た言葉は救けを求めるものだったと」

「はい…どんな状況かは分からないですけど…」

「お前から言葉は送れないのか」

「あ…やってみます」


ここまで距離がある状態でやったことはなかったが、鋭児郎は挑戦することにした。あれから声は聞こえてこない、心配で仕方なかった。


『シオン、シオン、聞こえるか!?』

『っ、鋭児郎!?』


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