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その後、まずはアクティビティ系を攻めようという鋭児郎の方針に従って、ヨーヨーを指にぶら下げたままシオンは参道を進む。おいしそうな匂いをさせる飲食系の屋台が多いようだが、お面を売っているところや何やら景品がたくさんある宝くじのような屋台など、バラエティー豊かだった。
「鋭児郎、あれは?」
すると、その中の1つに人気のある屋台があった。列が長く途絶えることがない。
屋台には射的と書いてあり、文字通り人々は簡単なコルク長銃を持って景品を撃っていた。
「射的か、見ての通り、コルク撃って撃ち落としたモン持って帰れるところだな」
「へぇ…うわ、ここにも景品にゲームある」
最新のゲーム機があるのは本当にどこまでも日本らしい。先ほどの宝くじの屋台でもあったが、普通当たらないという鋭児郎の言葉に納得した。射的にしても、コルク銃の質からして、重いゲーム機を撃ち落とすのは至難の技だろう。ただ、運任せよりか可能性がある。
「こんなとこでゲーム手に入ったらコスパ最強だよなぁ」
「?欲しいの?」
「ん、まぁ、雄英通わせてもらっててゲーム欲しいなんて言えねぇしなぁ」
鋭児郎の様子からすると、別にすごく欲しいわけではないが、親にねだるのが憚られるものという意識ではあるようだった。
「…やってみていい?」
「おう、いいぜ」
シオンが希望を伝え、鋭児郎と並ぶ。列が進むとすぐに後ろに人が並ぶため、一定の長さになっていた。並んでいる間、冷静にシオンは景品と銃の性能を分析する。
「…これさ、鋭児郎の分と2人分を一気に僕がやるとかできるかな」
「おっちゃんしだいだな!」
「分かった」
交渉はしてみよう。そう決めて、列が進むのを待つ。
やがて、2人の順番が来た。シオンは店主の男に目線を合わせる。
「あの、2人分、まとめて一人でやってもいいですか」
「おう、二丁持ちじゃなきゃいいぜ」
「ありがとう」
両手で持たなければいいらしい。これなら勝てる、シオンはお金を払って確信した。
「鋭児郎、銃持ってて。僕がすぐ受け取れるように」
「お、おう…」
何やらガチ勢モードのシオンに、鋭児郎は言われるがまま銃を手に持つ。シオンはもう一丁を装填した。
銃のタイプはマスケット銃のような単発式、一回ごとに装填が必要で、銃口からコルクをいれる。
シオンは左手にコルクをまとめて6発分持った。そして右手に銃を持ち、鋭児郎は右側で銃を持って待つ。
そして、シオンは一気に動いた。
まず一発、一番上の一番左、撃つ場所に指定された地点から一番遠いところに鎮座するゲーム機の箱の角に当てた。ぐらついたところを、即座に次弾を装填し発砲、それを3発やってから、すぐに鋭児郎から銃を受け取った。
それを撃っては装填するというとんでもないスピードでこなしていくと、ゲーム機の箱は傾いて接地に戻る直前にまたコルクが当てられて傾くというのを繰り返し、どんどんその傾きは大きくなっていった。
そして、その傾きはついにシオンの計算通り重心を崩す。
列に並んでいた人々がどよめき、更にそのざわめきにつられてこちらを見た通りすがりの人々も驚きの声を上げた。
ついに、難攻不落のゲーム機が落ちたのだ。
「すっげえええ!マジかシオン!!」
鋭児郎も驚いてそれを見つめた。店主の男も驚いて頭を抱えた。市場価格数万円のゲーム機を、僅か600円で仕留めたのだ。
「…やるな兄ちゃん」
店主は参ったようにゲーム機をシオンに手渡した。ちょっと申し訳ない。こちとら、本物の銃を本物の戦場で扱っていたのだ。
さすがにそんなことは言わず、シオンはゲーム機を受け取って鋭児郎とともにその場を後にした。