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交差点にブレーキ痕を残して入って来たバンは、後ろに保育園などで使われる散歩用に子供たちを乗せる大きな籠がロープでつながれていた。籠は宙に浮いており、その中には緑谷、蛙吹、峰田、葉隠、そして麗日が乗っていた。どうやら麗日が浮かせていたようだ。

平和の象徴の後継と呼ばれる緑谷の決め台詞に続いて、バンからもわらわらと出てくる。
運転席からは八百万で、見た目に反してとんでもない速度でバンを乗り回したらしい。助手席から轟、後ろから青山、尾白、口田、砂藤、障子、耳郎、常闇も路上に次々と出て来た。
さらに、エンジン音を轟かせて飯田も交差点にすさまじい速さで駆け付けた。
なんと、ここにA組の応利以外が勢ぞろいしたのである。
呆気にとられる勝己や切島たちをよそに、上鳴がしたり顔でやって来た。


「電話の内容で察してさ、すぐにA組のグループで投稿したら、もう現場入りしてたA組が一瞬で集まってくれたわけよ」

「たまたま私が現場に急行するためバンを創造し終えたところでしたので、麗日さんと協力してA組のメンバーをピックアップしたんですの」

「すごい!こんな順序よく…!」


芦戸は勢ぞろいしたA組がごくわずかな時間で駆け付けたことに感嘆した。それには緑谷がうなずく。


「障子君と耳郎さんの索敵能力、そして口田君の動物の力で皆の居場所がすぐわかったんだ。青山君が仮免のときみたいにビームで合図して、そこに集まれたメンバーはバンに、間に合わなかったメンバーを麗日さんが浮かせた籠に乗せたんだ」


それぞれの個性が雄英時代よりも、さらに相棒時代よりも遥かに強化されたからこそ、これほどまでに迅速に集結したのだ。


「お、お前らがわざわざ集まったのって…」

「かっちゃんが応利君のところに行けるように」


感動のあまり目を潤ませる切島に、緑谷が再度頷いた。

きっと今までなら、勝己は緑谷に怒鳴り散らしていた。しかし、すでに戦闘を始めてあっと言う間に敵を掃討していくA組メンバーを見ていると、不思議とそういう気にはならなかった。


「俺たちがいりゃ大丈夫だろ」

「インゲニウム事務所もフル活動だからここには代わりはいる、だが元相棒でもある応利君を任せられるのは君しかいない!」



そう言って轟は氷結で大きな滑り台のような滑走台をつくる。飯田は勝己の後ろに立って、その横に緑谷も並ぶ。さらに、勝己の背中をぽん、と誰かが叩いた。振り返る前に体が浮かぶ。


「応利君をお願い、爆豪君!」


麗日は意志の強い瞳で笑い、拳を突き出す。
そして最後に、切島と目が合った。切島は大きく頷くと、勝己にニッといつもの人好きのする笑顔を向けた。


「行ってこい、爆豪!!」


飯田と緑谷が浮かぶ勝己を掴む。バチバチと緑谷のフルカウルが発動し、飯田のエンジンが起動する。
勝己はどこに目をやればいいのか分からず、正面を睨みながら言った。


「―――轟、飯田、麗日、切島…デク。後で覚えてろ」


応利以外には素直にならない勝己だが、しっかりと全員の名前を呼んだだけで、全員勝己の本心を察する。言葉通りの意味ではないことくらい分からないほど、薄い関係ではなかった。

そして一気に飯田と緑谷は地面を蹴って、轟の氷結の上を滑っていく。麗日のおかげで重力が直前までかからず、思い切り風が頬を撫でた。
滑走台の頂点まで来ると、途端にビル街の光景は高い空中からの俯瞰に変わる。都心方面に向かって青空が続き、黒煙は背後にしかないようだ。

勝己は麗日の個性が解けた瞬間に素早く爆破を開始する。


「いってらっしゃい!かっちゃん!!」


そんな緑谷の声を聞いたのを最後に、勝己は全力で、応利の待つ病院へと空を駆けた。


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