変わらぬ仲間


それから数日して、2人はA組の飲み会に参加することになった。飲み会と称した出産祝いなのは分かりきっている。応利の母親が大希の面倒を見てくれているので、2人は夜の早い時間に飲み屋へ向かう。早めの時間で解散することを見込んでの開始時間で、そうしたところも2人への配慮だった。

有名人御用達の高級な個室飲み屋に入ると、座敷にはすでにメンバーが勢ぞろいしていた。


「おっ、主役来たぞ!」


そんな上鳴の声ととともに、おーっと歓声が上がる。見慣れた面々に招かれ、2人は座敷の上座に座らされた。見渡すと、忙しいだろうに全員が集まっていた。


「うし、じゃあさっそく乾杯すっか!!」


切島が音頭を取ると、ちょうど運ばれて来たグラスやジョッキが全員に行き渡る。乾杯の分だけ飲むと事前に伝えてあるため、2人にも普通のビールが渡された。珍しく勝己も不機嫌そうではない。


「A組最初のゴールインと出産を記念して!!乾杯!!」


かんぱーいと勢いよく声が響くと、すぐにガラスのぶつかる音が立て続けに満ちる。全員が2人にジョッキをぶつけてきて割れるのではないかと思ったほどだ。
なんとか乾杯を終えてジョッキを傾けると、実に久しぶりのビールの味に、応利は思わず唸った。


「ああああ美味い!!」

「応利久しぶりだもんな〜」


隣に座る上鳴がケラケラと笑う。その横にいた葉隠が、おもむろに身を乗り出した。


「てか早く赤ちゃん見たい〜!爆豪事務所はもう見たんでしょ?」

「いいだろ〜」


上鳴のどや顔に苦笑する。上鳴はじめ、事務所のメンバーはすでに家に来て拝顔済みである。
葉隠の要求に勝己は面倒そうに答えた。


「そのうちCMで流れるからそれ見とけ」

「え〜、実物がいい〜」

「まぁ実物のが可愛いけどな」

「うわ、ほんとに爆豪君が親ばかしとる」


そんな勝己に麗日がちょっと引いたようにしていた。A組はメディアで惚気てばかりいる勝己にドン引きで、勝己はそんな彼らに「うるせぇ」と威嚇した。そんなものを意に介さず、それぞれ勝己の変化を好意的に受け止めつつ茶化した。


「そうだ応利君、あの事件の犯人とは連絡してるの?」


そこへ、緑谷が気になったように聞いてきた。ほとの発端となった姉さんのことだ。


「あぁ、姉さんのこと?」

「姉さん…」

「新宿でそう呼ばれてるんだって。これから、不妊に悩む人や子供を産みたいカップルにそれを実現させるための取り組みをするらしい。連絡は、生まれたときにしたきりだな。それ以降は互いに関わらずにいこうってなった」


姉さんには感謝の電話をした。あちらはあちらで、2人の様子を見て自身の行動を反省し、自分の力がもっと人のためになるのだということを知って、書類送検されてから新たな仕事を始めた。大学病院などと連携して、出産できない人たちにその機会を与えるビジネスをするのだという。
姉さんも一般人、そして軽度とはいえ元犯罪者でもある。互いに不必要な干渉はするべきでないし、「あなたにはもう私は必要ないでしょう。あれだけラブラブなところ見せつけられて必要とは言わせないわ」と言っていた。


「あの個性ならとても社会貢献できるよね」

「そうだな」


緑谷はさすがにナードらしいブツブツは控えてそれだけ言うにとどめた。しかし手は筆記するように動いていたので、内心ではいつものクソナードをしているに違いない。


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