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そこへ、麗日はじめ女子たちがグラスを持って集団でやって来た。男子たちを押しのけて、応利の周りに集まる。どけられた上鳴や峰田の不平は無視している。相変わらずの女傑たちだ。先頭の麗日は、なぜか再びグラスをチンと鳴らしてから話しかけて来た。
「ねぇねぇ応利君、やっぱり、出産て大変?いや、大変なのはわかってるけど、やっぱこう、女としては聞いときたいっていうか…」
「そうそう、まさかの誰よりも早く経験したわけだし!」
「ぜひお話を聞いてみたいわ」
耳郎や蛙吹も興味津々といった感じで、八百万はすでにメモを用意していた。
「やっぱ痛い!?」
テンションも高く芦戸が聞いてきたので、あのときの痛みを思い返す。
「おー、冗談抜きに死ぬかと思った。言っとくけどマジで痛い」
「ひえ…」
そんな応利の言葉に情けない声を出したのは上鳴で、女子たちは「やっぱりかぁ」と逞しく受け入れた。
「俺はヒーローだから痛みに耐性あったけど、確かにショック死しかねねぇなって思った」
「隣に爆豪いたんでしょ?やっぱ支えになった?」
応利の言葉に大げさに反応するのは男子で、女子は当然のこととして受け入れていた。そうして耳郎が尋ねた言葉に、応利はゆっくりと、深く頷いた。
「…勝己がいなかったら、耐えられなかったかも。すごく支えになった。だからさ、」
応利は少し声を大きくして、体を全体に向ける。全員元からこちらに注目していたが、応利に意識を向けた。
「あの日、勝己を送り出してくれて、本当にありがとう。皆にたくさん救けてもらって、今がある」
「応利君…」
応利の真剣な声に、麗日は感動したように震えて名前を呼んだ。
それに続いて、隣の勝己が口を開いた。
「……世話になった」
そして出て来たのは、なんと感謝。あの勝己がそんなことを言うとは予想だにしていなかったA組は一瞬唖然とする。目を逸らして言いづらそうにしながらも、それでも全員に聞こえる程度の声量は維持して言った勝己。
応利の出産に関わった人々に対して、勝己は感謝の意を伝えることをまったく厭わなかった。それは、A組に対しても同じだった。
切島はぐっと口元を引き締めてから、笑顔を作った。
「水くせぇぞ爆豪!俺らの仲じゃんかよ!!」
「そ、そうだぜ!当たり前だっつの!!」
上鳴もそれに乗っかると、2人は勢いよくこちらに飛び込むようにしてやってきて、勝己の背中をバシバシと叩く。「いてぇな邪魔だわクソが!」と騒ぐのを横目に、離れたところで緑谷が泣いていた。
隣の轟に心配されている。
「な、なんか感動して涙出て来た…」
「うむ、仲良き事は美しきなりというやつだな!」
「相変わらず涙腺よえぇな」
いつもの感じの3人組、その横では尾白たちが騒ぐ勝己たちをスマホで撮って笑っていた。
女子たちはすでに「いつ結婚するか、それが問題だよね」と話し始めている。
A組らしい、各自が好き勝手にする時間だ。雄英時代から変わらないメンバーを見ていると、あのとき勝己のもとへ駆けつけて、2人のために行動してくれたクラスメイトたちの変わらぬ優しさが身に染みるようだった。
まだ生まれたばかりだからA組メンバーにお披露目することは叶わないが、いずれ大希が大きくなったら、両親を救けてくれたヒーローたちを紹介したい思う。