すべての母に敬意を
●続き
管理人が実際に母から聞いた流産の話をモデルにしています。当事者として抵抗があるなど、読むかどうか一考してからにしていただきたい、人を選ぶ内容です。
2人は爆豪家を出ると、神奈川県に向かう。応利の実家に寄るためだ。光己からアニマルパジャマをはじめとする育児グッズなどを譲り受け、後部座席の後ろに収納済みである。
大きな邸宅だった爆豪家と違い、応利の実家は川崎市内のどこにでもあるような一軒家だ。
「おかえり!やだ、大希ちゃん大きくなった?」
「こんな短期間でならないって」
光己とまったく同じことを言う母、集美(あつみ)に思わず苦笑する。「どもっす」とあいさつする勝己に軽く頭を下げて、集美は2人をさっそくリビングに通した。こちらもやはり、コーヒーと洋菓子を用意していた。
「大希ちゃん抱っこしていい?」
「ん、」
「やーんもう可愛い〜」
光己よりもテンションが高い集美だが、実際には光己よりも年齢は上だ。笑い皺にそれがよく分かる。
ソファーに座ると、向かいに集美が大希を抱えたまま座る。そして、こちらに少し訝しがるような眼を向けた。
「今日は何か事後報告するんじゃないわよね」
「事後報告?」
「だってあなたたち、付き合っていることや妊娠したことだって報道のあとだったじゃない。先にテレビで知って度肝ぬかれたわよ」
「あー…その節は…や、ほんと今日は荷物取りに来ただけだから」
「それならいいわ」
ゴシップに耐えかねて(勝己はけん制だったようだが)2人が交際を世間に報告したあとに、そういえば親に話すべきでは、と遅ればせながら気づいた2人は、それぞれの親に挨拶しに行った。
両家ともにしこたま怒られたが、交際そのものを否定するようなことは一切言われなったのが印象的だった。
妊娠のことは、あのバラエティー番組でのことは勝己に報告するより前のことだったのだ、事後報告になるのも仕方ない、と思う。結婚することは事前に告げたのだし、そろそろ許して欲しいものだ。
「で?結婚式はいつにするの」
「そろそろ大希も落ち着くし、家のことも一区切りついたし、3か月以内にはって感じで考えてるよ」
「マスコミも呼ぶんでしょう?おめかししないとね」
その言葉に、光己との話が浮かぶ。そういった何気ない言葉に至るまでに、世の母親たちがどんな深い決意をしているのか、きちんと知ることができて良かった。
「…あの、ちょっと頼みがあるんすけど」
「なに?」
するとおもむろに、勝己がそんなことを言いだした。応利には思い当たる節がない。首を傾げると、同じタイミングで集美もそうしたので、勝己は口元が緩みそうになるのを抑えているようだった。
「っ…、応利の、アルバム見せてもらえないっすか」
「は!?」
「あら!いいじゃないいいじゃない!久しぶりに出してみるわね!」
集美はよろこんでリビングを出ていった。止めることもできないスピードだし、集美の個性は「集積」、任意のものを手元に集めることができるので、すぐに持ってくるだろう。
「何言ってんだ」
「俺のだけ見られんのは不公平だろーが」
「俺のアルバムなんてみたって楽しくねぇだろ」
「お前は俺のアルバム見てどうだったんだよ」
「超楽しかった」
ぼす、と勝己に軽く肩を殴られ、勝己は集美が置いて行った大希を向かいのソファーから回収して抱き上げる。