此処にましませ 狐狗狸さん−2


放課後、2人を連れて神社に帰ってきた。すでに太陽は傾き、冬の到来を予感させる渇いた風が参道に吹き付けていた。


「すっげ!ほんとに神社なんだな」

「まぁな。なんか違和感は?」

「特にねえよ!瀬呂は?」

「……ちょっと、実は、頭いてえ」


上鳴はテンションが上がっていたが、隣の瀬呂は顔をしかめて米神を押さえていた。途端に上鳴は心配そうになる。まだ鳥居の前、境内には入っていない。


「…特になんも見えないんだけどな」


瀬呂には特に何か憑いているようには見えない。いれば見えている。応利が2人の気のせいではないかと思ったのも、見えなかったからだ。


「え、圧気、見えるとかあんの」

「あっ……」


つい、口を滑らせてしまった。上鳴も瀬呂も、いよいよ本格的に心霊現象ではないかと感じたのか、恐ろしそうにし始めた。


「な、なぁ、ほんとに、コックリさんなのか!?俺ら、大丈夫なんかな!?」

「落ち着けって……とりあえず来い」


いったん2人を鳥居から中に入らせ、そのまま参道を本殿に向かう。本殿の脇にあるのが住宅だ。
すると、境内に入って数秒で瀬呂が「あれ、」と声を発した。


「頭痛引いた…」

「マジで!?」

「結界が効いたのか……」


瀬呂の様子に嘘は見えない。もし境内に入った途端に収まったのなら、確かに人ならざるモノの可能性がある。結界は悪しきモノしか弾かない。


「え、結界……?」


そしてまたそういうワードを口にしてしまった。目をパチパチとさせる2人から視線を外して、「こっち」とだけ言って家に招いた。引かれてしまったかもしれない。
無言のまま玄関に着き、引き戸を開ける。すぐに居間からエリと洸汰が出て来たため、応利は人差し指を口元に当てる。2人は人間を見て頷き、廊下の奥へと駆けていった。


「へっ、今、足音したよな?」

「圧気、誰かいんのか…?」


誰の姿も見えないのに響いた軽い足音に、2人は顔を青ざめさせた。物理的な効果は感じ取れてしまうらしい。


「悪いモンじゃないよ」

「生きてるモンじゃねえの!?」


驚愕する上鳴に苦笑だけ返してから、否定せずに玄関を上がった。2人はおっかなびっくりとしながら家に上がる。
おじゃまします、と言いながら目線は忙しなく辺りを見渡していた。

2人を居間に通して座布団に座らせてから、適当に茶を出すため台所に入る。そこには、やはり勝己と焦凍がいた。居間と台所は襖でしか隔てられていないため、応利は小声とも言えないような小さな声で話し掛けた。


「あいつら、クラスメイトなんだけどさ。コックリさんやってから変だって」

「コックリさんだァ?」


勝己は呆れたようにしている。声は2人に届かないため、応利とは違い普通に喋っていた。


「狐の霊を呼び出すってやつだろ。俺たちの世界でも知られてるが、あんなので降りるやつはいねえ」

「つか神官でもねえただの人間が降霊なんざできるわけねぇだろ」

「そうだよなぁ。でも、どうにも変なのは確かだ」


焦凍は襖の隙間から居間の2人を見遣る。少し見詰めたあと、応利に向き直った。


「あいつらから、そこそこつえーヤツの気配がする。コックリさんをきっかけに、集団恐怖心に呼ばれてやって来たヤツだな」

「しかも、頭脳はあるらしいな。うぜえが、境内出たら今晩にでもあいつらにも手ェ出すぞ。神社に警戒して行動を早めるつもりだ」

「そういう感じか……じゃあ、夜に2人と一緒に待機してやって来たところを祓う感じでいいか」


境内の外で、夜に迎え撃てばいい。そう言うと、勝己は呆れたように溜息をついた。


「お人好しめ。俺ァお前のため以外に動くつもりはねぇぞ」

「俺は応利の頼みなら手伝うぞ。一人で十分だしな」


2人を助けようとする応利に対して、勝己はあくまで守る対象は応利だけだと言う。一方の焦凍は応利が求めるならいいらしい。
応利は焦凍に抱き着いて、モフモフとした尻尾を腕に抱く。


「ありがと焦凍……」

「お、今晩終わったら交b「言わせねェぞクソ狐」うるせぇな」


勝己は焦凍から応利を引き剥がしつつ後ろから抱き締める。何やら気持ちの悪いことを言おうとしていたのを遮った勝己に焦凍は軽く睨み付けたが、そこへ「圧気?」と上鳴の呼ぶ声がしたため、応利は2人を放って居間に戻ったのだった。


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