お騒がせ会見−3


ホテルに着くと、受付ですぐにスタッフが応利を案内し始めた。報道陣の目につかないエレベーターを使ってホテルの高層階に向かう。そして着いたのは、まさに会見が行われる大きな広間のある階で、やはり報道陣に見えない衝立のされた廊下を通って、会見場の隣の部屋に通された。
スタッフは一礼して去っていく。室内のものは自由に使って構わないと言われたが、恐らく接待で使われるのだろう小さな部屋は豪華で、ティーセットがテーブルに置かれていた。

時間的に爆豪はもうすぐ会見だし、このあとどうすればいいのか。応利は手持無沙汰にテレビをつける。すぐ隣でやっているというのに、テレビで会見を見ることになるが、意図が分からない以上勝手にしていていいだろう。

実はメッセージアプリでは、轟と緑谷が「行くな」とか「すぐ離れて!」とか言ってくれていたのだが、ティーセットと一緒にあったマカロンの美味しさにうつつを抜かしていたために気づけなかった。これが最後のチャンスだったのだ。もし爆豪が応利の甘党ぶりを知ってこれを準備していたのだとすれば、本当に末恐ろしいまでにみみっちい男である。

やがて19時になって、会見が始まった。ゴールデン番組を遅らせてまで会見をほとんどの局が報じるとは、さすがの注目度と言わざるを得ない。


テレビ画面には、白い布に覆われた机に爆豪が向かい、礼をして座る様子が映し出されていた。机の上にはマイクが束ねられている。登壇するのは爆豪1人のようだ。
画面の右上には「二股疑惑で爆心地会見」とある。隣の部屋ながら、一切騒がしい様子は聞こえてこないため、改めてこのホテルのグレードを感じる。フラッシュが激しく炊かれてまぶしい。


『…これより会見を始めさせていただきます』


一応司会として、部屋の端に男が立っている。ヒーローの会見で司会やセッティングなどを請け負う代理会社の者だろう。芸能事務所と違い、そういうことは専門外なのだ。


『まず、ヒーロー・爆心地より挨拶と、本日発表された週刊誌報道についての説明があります』


いきなりクライマックスだ。正直、爆豪が本当に二股したわけがないため、この説明で事足りる。記者の質問を鋭く交わしていき、記者たちが白けて終わるのだろう。
日頃の粗暴な振る舞いなど関係のないことは司会がシャットアウトしてくれる。ちなみにそういったことはすべてオプションサービスである。金を積めば積むほど守ってくれる仕組みだ。爆豪ならそれくらいはしておくはず。


『本日はお集まりいただいてありがとうございます。単刀直入に言うが事実無根、2人とも依頼で護衛をしただけで写真も護衛中のものでしかねぇ。以上』

「うわ、端的…」


あまりに端的な言葉に記者たちもざわつくが、これくらいは彼らも予想内だろう。すぐに記者の1人が手を上げる。


『列島新聞の加藤です。女性たちは爆心地との関係を否定しませんでしたが』

『ねぇわ。俺の仕事用と私用のスマホ見せてやってもいい。確かめたきゃやるよ』

『あくまで関係はないということですね。しかしやり取りはしようと思えばいくらでもできる時代です。根拠に乏しいのでは?』

『どう思おうと勝手だ。俺はクソめんどくせえことしやがったあの女どもと金輪際会うつもりはねぇ』


あまりにずばずばと言うものだから、こちらが冷や冷やする。ただ、いつもテレビの前ではこんな感じだ。爆豪は良くも悪くも自分を偽らない。
続いて別の女性記者が立ち上がった。


『大日本放送の宮原です。しかし女性たちに対して何か思わせぶりなことをしたなどのこともなかったのでしょうか?それに、先ほどから言動が粗暴すぎませんか』

『してねぇ。いつも通りだ。以上』


女性らしく女性目線の質問だが、爆豪は容赦なく切り捨てる。開始10分と経っていないのに、やはり誤報だったかと記者たちの間に早くも白けた雰囲気が漂い出す。


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