お騒がせ会見−4
しかし意外にも女性記者が食い下がった。
『2人ともそれなりに名の知れたモデルと女優です。そう簡単にあなたとの関係をちらつかせて外堀を埋めるような真似をするのでしょうか』
『炎上商法じゃねぇの』
『そのような手段を取らずとも2人は良かったはずです。あなたの行動の潔白を証明するものは、先ほどの列島新聞の方の質問でもそうでしたが、決定的なものは何一つ出てきていません。ご自身の普段のキャラクターにかこつけた高度なトリックではないのですか?世論を騙すための』
ちょっとしつこいような気もするが、この記者の言うことは間違いでもない。記者たちは普段の爆豪のことを知っているからどうせ誤報だろうと思ったが、実のところ爆豪は何も証拠を出せていないのだ。
しかしこれはいわゆる「悪魔の証明」、ないことを証明することは概して難しい。最初から爆豪にとって不利なことだ。
また、食い下がってそれっぽい論理を展開した記者への回答に対して、会見場の空気はまた期待感に満ちる。どうやってこれを交わすのか。応利も固唾をのんで見守った。
『…チッ、仕方ねぇ。じゃあ出してやるよ、とっておきの証拠をなぁ』
すると爆豪はそう言ってニヤリと笑った。記者たちがざわつく。応利は手元のスマホで呟き系SNSの#爆心地記者会見というタグで人々の反応を見てみる。
とっておきの証拠、と聞いて疑問符が飛び交っているのが見えた。タグの件数は数万件におよび、相当の注目度があることが窺える。
『いいか、よく聞け。俺には、たった一人と決めたヤツがいんだよ』
『なっ、まさか、婚約者ですか!?』
なんと爆豪が言い出したのは、すでに心に決めた者がいるということだった。今日一番のスクープの予感をすぐに感じ取った敏腕記者たちの目の色が変わり、女性記者の声も弾んでいるのが隠しきれていない。すでに彼らの興味は二股疑惑などではなかった。
ネットでも疑問符は驚嘆譜になっている。
『そういうこった。俺にはな、応利しかいねぇんだよ。お前らも大好きなヒーロー・パスカルだ』
『な、えっ…?』
「……は?」
会場が沈黙で満ちる。SNSも止まった。世間が、いったい何を言っているのかと耳を疑っているのである。応利は呆然としてテレビ画面を見つめた。
『ば、爆心地は、その、そういう、』
『キメェ勘違いすんなよ。俺は男が好きなわけじゃねぇ。応利が好きなだけだ。あいつと俺は未来をともにするって決まってんだよ』
呆気にとられた記者たちに爆豪はそう不敵に言ったが、SNSは理解した人々から絶叫に包まれていた。冗談を疑う者もいるが、珍しく、爆豪が本気の笑みを浮かべているものだから、信憑性は高いものとして受け止められているようだ。
「…なに言ってくれちゃってんの…?」
そして一番動揺しているのは応利である。だってそんなこと、一切知らない。勝手に未来に組み込まれていることに戦慄すら覚える。まずい、このままでは応利の外堀がセメントで埋め固められて高層ビル街になってしまう。
危機感に震えた、その瞬間。突然外から轟音が響き、一瞬遅れてテレビ画面でも出入り口が吹き飛んだのが写った。同時に入口付近に広がる氷。ざわめく記者たちの視線の先には、爆豪を睨みつける轟の姿があった。
『勝手なこと言ってんじゃねぇぞ爆豪!応利と結婚すんのは俺だ!』
『あぁ!?お呼びでねんだよ半分野郎!!』