お騒がせ会見−5
突如として乱入してきた轟、さらにその爆弾発言に、再び会見場は一瞬静まり返ったあと、また驚きでどよめいた。SNSは阿鼻叫喚である。もう言葉を成しておらず、驚きと悲鳴に満ちていた。爆豪は立ち上がって椅子を蹴とばし、轟を睨みつける。
『ひ、ヒーローショート、ここは会見…ヒッ』
司会が一応諫めるのだが、轟の底冷えするような睨みに耐え切れず引き下がった。慌ててマイクが轟の近くにも寄せられ、怒鳴っていない声も拾われるようになる。
『随分、大胆なことすんじゃねぇか爆豪』
『てめぇも人さまの会見場に乗り込むとは見苦しいなぁオイ、応利と結婚すんのは俺なんだよ出しゃばんな死ね!!』
『お前こそ勝手なこと言ってんじゃねぇよ、応利は俺とがいいに決まってる』
『あ?頭沸いてんのかカス!決めつけてんじゃねぇよ!!』
『決めつけじゃねぇ、理(ことわり)だ』
完全に決めつけである。そもそも応利は轟ともなんの約束もしていない。勝手なことを言わないで欲しいと切実に願う。2人の口論はエスカレートしていき、誰にも手が付けられなかった。しかしどの報道機関もこんな面白いものはないとばかりに撮影を続け、SNSは祭状態である。
『だいたい、お前みたいな粗野なヤツと応利が釣り合うわけねぇだろ。生まれ変わって出直せ』
『言うようになったじゃねぇかよ舐めプ野郎…応利はお前みてぇなメンヘラマザコン願い下げだろうが!!』
『少なくともDV夫になることが目に見えてるお前よりは絶対に幸せにできる』
『はあ〜〜?てめぇは髪だけじゃなく脳みそもカラフルなんかよ目出度い思考回路しやがって!大脳新皮質貼りなおして来いや!愛でて愛でて愛でまくるに決まってんだろうが死ね!!』
まさに罵詈雑言の応酬である。ひどい絵面だ、と思っていると、突然、反対側の壁が吹き飛んだ。同時に爆音が外から聞こえ、この部屋の窓も揺れる。
記者たちからも少し悲鳴が上がると、瓦礫の中から夜風を受けて立つ青年が現れた。
ヒーローになって体格がさらに良くなった緑谷だ。前は応利より小さかったのに、今や平和の象徴と呼ばれるだけあってそれなりに体格が良い。童顔なのは相変わらずだが。
『2人とも!勝手なこと言うのはそこまでだ!応利君が可哀想だよ!』
「緑谷…!」
やはり緑谷は生来のヒーローだ。全国にただ応利の恥を広げる2人と止めに来てくれたらしい。爆豪、轟ともに一瞬反省したが、直後の緑谷の言葉にすぐそれは掻き消える。
『応利君は僕とPlus Ultraするんだから!勝手なこと言われて可哀想だ!』
『…はぁ!?っざけんなよクソナード!可哀想なのはてめぇの頭だクソが!!!』
『悪い緑谷、友達でもそこは譲れねぇ』
一番気持ち悪いことを言った緑谷は子供から老人まで皆に愛されるヒーローだ。ついさっきまでそう思っていた自分を叱りたい。
『だってどう考えてもこの3人なら僕が一番安パイでしょ!だってDV夫かヤンデレ予備軍だよ?』
『殺すぞ!ただただ殺すぞ!!』
『さすがに怒るぞ緑谷』
記者たちの輝く目と高速でタイピングする手が鬱陶しい。司会は諦めて床に座って眺めている。SNSはもう大騒ぎだ。トレンドには「パスカル総受け」とある。もう勘弁してくれと思った。
「爆心地がいいと思う」「いや、将来性はショートだろ」「デクが一番幸せになれると思う」など、なぜかすべてこの3人ならという話が進んでいる。
応利は立ち上がると、テレビの後ろ、会見場に接する壁に手をついた。もう、我慢の限界だ。
近くのリモコンを壁に投げつけると、同時に応力を最大限に引き上げる。壁はリモコンが当たったことに対する応力が強すぎて自身の耐久性を越して、内側からはじけ飛ぶようにして崩壊した。
突如として崩れた壁に、会見場のフラッシュと記者の視線が集中する。ちょうど目の前には、会見席と爆豪、轟、緑谷がいた。テレビ越しの音声がすべて直接耳に入ってきて、一気に鼓膜が震えた。
そして驚く3人を無視して机に向かうと、マイクを手に取った。