お騒がせ会見 デート編−3
「応利君と水族館デートして膝カックンしてお姫様抱っこして好きなところ10個言って自撮りしました!可愛かった!」という緑谷のツイートとともに、2人の自撮り写真が載せられた投稿は、10万単位でリツイートされただけでなくメディアにも取り上げられて「一歩リードか!?」などと囃された。
それに応利がキレた週の週末、応利は轟に呼び出されて飯田の事務所のエントランスにいた。なぜかスーツを着てこいと言われたので言う事を聞いているが、なぜこんなことしてるんだ、と自分の迂闊さを呪った。
あれだけのことをして世間を騒がせているヤツであっても、友人として誘われたら来てしまうあたり、自分はそこそこヤツらのことが好きなのだなと思う。もちろん、友人としてでしかないが。
「応利、待たせたな」
「おー、って…はぁ!?」
背後から声をかけられて、応利は振り向く。その次の瞬間、応利は驚きで叫んだ。
光沢のある高そうなスーツに身を包んだ轟が、白馬に乗って現れたのである。嫌味なくらい白馬が似合っていて、スーツ姿も相まって完全に王子様しかりとしている。
トキメキなどなく、ただただドン引きだった。
「…何してんのお前」
「迎えに来た」
「そんなチャリで来たみたいな…いや、ほんと、もう訳わかんね…」
昔から天然な轟だが、ここまでぶっ飛んだことをされたのは初めてだ。
「馬で公道って平気なの…?」
「そのあたりのコンプライアンスは大丈夫って言われた」
誰にだよ、と思いつつ、法的問題がないならとりあえずヒーロー的には良い。いや良くない。個人的に良くない。
「…で、まさか俺にもそれに乗れって?」
「あぁ」
頷くと、轟は華麗に馬を下りて応利の前に跪いた。
「お手をどうぞ?」
うっすらとほほ笑んで、下からのアングルで手を差し伸べる様は本当に王子様だ。むかつくくらい格好いいそれは、さすがの応利も少しドキリとした。
「な、に言ってんだアホ」
「俺は本気だ。お前に振り向いてもらうためなら何でもする」
「いやいや、馬で来る前にもっといろいろあっただろ!?何でもするってまだ馬よかハードル低いことたくさんあったと思うけどな!?」
「振り向いてもらえるか」
「そりゃ公道で白馬に乗ったイケメンがいれば何事かと振り向くだろうよ!」
「そうか、良かった」
「驚きで二度見するって意味だかんね!?トキメキじゃねぇよ!?」
「じゃあ行こうか」
「聞いてねぇし!」
さすがの轟である。ツッコミが追い付かない、あまりに優秀なボケ製造機だ。
そして轟は話を聞かず、お手をどうぞと言ったわりに手ではなく応利の腰を掴むと、いとも簡単に抱き上げてしまった。そのまま横向きにされ、お姫様抱っこ状態になる。体が一気に不安定になり、思わず轟の逞しい体に抱き付いた。
轟は足元に氷の柱を作り、それに乗って柱をどんどん高くしていく。馬に乗りやすくなったところで、まず応利を股がらせ、その後ろに轟も乗った。
自然と従って乗ってしまったことに気づいたときには遅く、轟は手綱を握って馬を進ませた。
「うわ、ちょ、マジでこのまま行くのかよ?」
「おう。怖かったら俺にもたれてていいぞ」
「下ろしてくれると助かる」
「そうか」
「……いやそれだけかよ」
聞くのない轟は、応利の体の正面で手綱を握り、後ろから抱き締めるような体制だった。もう恥しかない。
そのまま公道に出ると、当たり前のことだが、道行く人が振り反ってはスマホを翳した。
「死にてぇ…」
「何か言ったか?」
「言ってねぇわハゲ」