お騒がせ会見 クリスマス編−2
「そんで?この共同ってのは?」
「あぁ、実はこの企画はこの前の飲み会で話していたんだ。そうしたら、同じくイメージアップを望んでいる数人から声がかかったんだ」
「……誰?」
嫌な予感がする。応利は恐る恐る尋ねると、飯田は朗らかに答えた。
「爆豪君、轟君、緑谷君だ!」
再びメガネを叩き割りたくなった応利である。
「なんっでだよ!そんな殊勝なこと考えるかあいつらが!!」
「ど、どうしたんだ圧気君…」
飯田は動揺する。実は飯田は、世間を騒がす一連の爆豪たちと応利とのことをよく分かっていない。
一度説明したが、「三角関係かい?」と的はずれなことを言っていた。図にするならあの3人を底面とする三角錐だ。頂点が応利である。「なるほど、体積を出すには複雑な関係ということか」とさらに言ってきたので、なぜ体積を求めることを前提としているのか分からず、もはや応利は呆然としたのを覚えている。
「爆豪君はあの通り粗暴なところがあるだろう、轟君も愛想は良くない。緑谷君は単純に名前を広めたいと言っていたな」
「ぐ、意外と的確なマーケティング…!」
爆豪はあの粗暴な言動をどこでもしてしまう。相棒時代は良かったが、独立してみると、爆豪のファンが一部の女性と若い男性に限られているのが現状だ。コアな女性ファンの人気は高いものの、同じくアンチも多い。
一方轟は、エンデヴァーがまず人気がない上に、轟自身は不愛想だ。イケメンだから女性人気は高いものの、男性からは総じて好まれていない。
緑谷は老若男女に好かれる好青年なので、次の平和の象徴ともされるだけあって人気ではある。しかし独立してから日が浅く、オールマイトのように誰もが知るヒーローとまでは至っていない。
爆豪と轟はファン層を拡大しアンチ層を減らすため、緑谷は独立したことや名前そのものをより広めるため、この企画に協賛するのだという。
意外と的を射ていると言っていい。
「…で、あいつらは何すんの」
「トナカイだ」
「……は?」
「サンタである君を運ぶトナカイ役をしてもらう」
「ソリでも引くわけ?」
「いや、君を背負ってもらう」
応利はついに飯田のメガネを叩き割った。
***
クリスマス当日。
街は華やかに飾られ、イルミネーションが木々に張り巡らされている。クリスマス商戦が終われば、街にはおせちやお歳暮が並ぶのだろう。
まだ時刻は昼なので、どことなく浮足立った雰囲気はあれど、仕事や学校へ行く日常もあった。
「意外と好戦的なサンタだな…?」
「もちろん、パトロールもかねているからな!」
そして、応利も仕事として東京のインゲニウム事務所にてサンタのコスプレをしていた。しかし、思っていたようなものとは少し違った。
基本的にはサンタの紅白の格好だ。しかし、上着はきちんと体の線に合うようになっているし、ベルトをして腰もしっかりと止められている。服がはためかないようにするためで、同様の理由で帽子はつけない。
手にはいつも使っているメリケンサックつきの皮手袋を嵌め、ベルトからはスーパーボールを入れたケースがぶら下がる。足はロングブーツである。
メリケンサックの皮手袋とロングブーツは、それぞれ殴ったり蹴ったりした際に、対象にかかる圧力を最大限にしたうえで個性による圧力強化を行い、相手に大ダメージを与えるためのものだ。スーパーボールは、地面に跳ねさせて、それにより地面に発生する応力を引き上げて破壊するためのものだ。天井や壁にも使える。
こうしたものはいずれも普段使っているもので、黒を基調とする小物なので紅白のサンタ姿に合わせるといかつく見える。
帽子すらないとなると、殴る蹴るの暴力をお届けするタイプのサンタのようだった。
「…で、これからどう動けば?」
「このプレゼントの袋を持って、都内の学校を回って欲しい。アポを取って了承を得た学校をマークしてあるから、そこを好きな順番で回るんだ。もちろん、子供たちにはサプライズになっている」
「そこはすげぇサンタだな…トナカイsは?」
「トナカイたちにはリレーで君を運んでもらう。最初は緑谷君、続いて爆豪君で、最後に轟君だな」
「はぁ…了解」
飯田に袋を渡され、渋々、応利は事務所の玄関で向かう。緑谷が到着している頃だという。憂鬱だが、そんな様子を子供たちに見せるのはプロ失格だ。やるからには、きちんと子供たちを喜ばせる所存である。