お騒がせ会見 クリスマス編−3


エントランスに着くと、すでに緑谷が待っていた。飯田は続いて仕事があるので、白い袋を持った応利だけが緑谷に合流する。


「あっ、応利君!」

「よっ」


軽く手を上げて挨拶をする。緑谷は、やはりトナカイの格好ではあったがこちらもなぜかスタイリッシュだった。ブーツやグローブはいつも通りで、茶色と白のツナギ型のコスチュームになっている。ベルトできちんと止められているため風にはためくこともない。
頭に何かつけているわけでもなく、赤い鼻すらなかった。サンタ姿の応利がいなかればただの茶色い恰好にしか見えない。


「雑なんだか考えられてるんだか…」

「すっごく考えられてるよ!一日限定の衣装にするにはもったいないくらいの伸縮性だし!それに」

「分かった、分かったから行こう」


例のやつが始まってしまいそうになったので遮ると、緑谷は恥ずかしそうに謝ってから応利と歩き出す。
エントランスから外に出ると、事前に聞いていたメディアが一斉に駆け寄った。


「あ、今出てきました!サンタ姿のパスカルとトナカイ姿のデクです!パトロールもかねているということで、機能性も配慮された服装となっているようです!」


リポーターがマイクを持ってやってきて、雑誌や電子版の記者はカメラを向ける。テレビカメラも回っている。


「パスカル、デク、今回の意気込みをどうぞ!」

「は、はい!頑張ります!」


まずデクが答える。あんな会見をしておきながら、いまだにこうしてマイクを個別に向けられると緊張してしまうという。一方でパスカルは冷静に答えた。


「今日だけ特別にサンタヒーローになります。頑張っている君のところにも行くかもしれないから、待っててね」


カメラに向かってニコリと述べる。少しリポーターが顔を赤らめていた上に、緑谷まで顔を赤くしていた。これは事務所のイメージアップのための企画なのだ、つまりは仕事。応利のスイッチが入っていた。

そうして対応を済ませると、応利は緑谷の背中に乗る。負ぶさる形だが、右肩には袋を引っ掛けているので、肩手で緑谷の左肩を掴んでバランスを取る。


「大丈夫?応利君」

「問題ない」

「よし、じゃあ行こう!」


緑谷の引き締まった体は安定感がある。緑谷は一気に地面を蹴ると、高く空に舞い上がった。ビル街が一瞬で遠のき、冷たい風が吹き付ける。
上昇はビル街を高く飛び越えたところで止まり、下降が始まる。
ジェットコースターの類が総じて好きな応利は、その落下する浮遊感が存外楽しく感じる。


「うお、すげ」

「飛び跳ねるから舌噛まないようにね!」

「おー!」


緑谷はそう言ってビルの屋上に着地すると、再びそこを蹴って飛び上がる。そうして飛び跳ねながら進めば、眼下の道行く人々が気付いて見上げて歓声を上げる。それに応利が手を振って返した。

そうやって進んでいくと、最初の学校が見えてきた。応利はその屋上を指さす。


「あそこだ緑谷!」

「了解!」


緑谷は再びジャンプすると、その学校の屋上に楽々着地した。それまで顔に感じていた風がぴたりと止まり、緑谷は少しだけ制動距離を走って止まった。
その背中から降りると、飛んでいたからか足がもたついてしまう。


「お、っと、」

「大丈夫?」


緑谷はすぐに応利の腰に手を回し、体ごと支えてくれた。袋の重みでよろめいたので、素直に助かる。ぐい、と抱き寄せられると、応利より背が高くなった緑谷が至近距離で見下ろした。


「酔ってない?」

「…大丈夫だけど」


緑谷は過保護というか、平然と応利のことも守ろうとする。それは応利だからではなく、誰であっても、たとえ爆豪であってもそうだ。そういうヤツなのだ。だから、応利も緑谷に支えられ守られるのは許せる。それが、次期平和の象徴と言わしめる緑谷の力なのだと思う。

応利は緑谷の腕から出ると、袋を抱えなおした。これから、中のモノをとあるクラスに届けてから、あらかじめ学校に郵送しておいたプレゼントを先生たちに渡してもらうことになっている。


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